新潟ツアー・のどぐろを食べに行く⑦

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 花屋で花を買うついでに、こんな写真を撮った。笑われるだろうが、ちょっとアートっぽくしたかったのだ。技術的な事は一切分からないが、ピンボケとか手ぶれなしに写っているから、まあよしとする。
 時々、花を差し上げることがあって花屋に行く。差し上げることはあっても、いただくことは滅多にない。食べられる訳ではないし、メンテナンスフリーで美しく咲き続ける訳でもないので、私には不向きなプレゼントなのかもしれない。実際、FaceBookに、ブルーの花の写真に「私だって、花の写真くらい撮るのだ。」と、コメントをつけてアップしたら、「この花は食べられるのですか?」とおちょくられた(笑)。
 まあ、何でもよいのだ。ただ単純に、人様が写した美しい花の写真にちょっと触発された出来心なのだから。

 もうひとつ、カメラにハンドストラップを付けた。探しまくって漸くこれだと思うものに出会った。かっこいい。ハンドメイドなのだ。嬉しさは隠せないので、写真を撮った。実物の方がいいが、仕方ない・・・
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 と、言う訳で話は続き、住吉屋の夕餉の様子からだ。

 「食事の時間は18:30からとさせていただきたいのですが、準備が出来ましたら、お迎えにあがります。」最初、部屋に案内された時、仲居さんはそう云った。別に部屋まで迎えに来られても差しさわりがある訳ではないが、散歩に行ったり風呂に入ったりと忙しいので、そのタイミングで部屋にいないかも・・・と、云う考えが過り、返事を一瞬躊躇した。
 その一瞬をさらりと捉え「では、お迎えは割愛させていただきます。お食事処は1階のフロントの前あたりになりますので、直接お越しください。もし、場所がお分かりにらないようでしたら、フロントにお尋ねいただければ、ご案内いたします。」「ああ、そうですね。その方がいい。」これで、余計な気遣いをしなしで済む。
 お客本位、出来る限りご自由に。でも、いつでも見守らせていただいています。そんなつかず離れず、過剰になり過ぎないサービスが行き届いている。

 散歩から部屋に戻ると、程なくインターホンが鳴った。「お食事の準備が出来ておりますが、よろしければ、お食事処までお越しください。」と。
 よろしくないはずがない。それぞれ持参したぐい呑みと日本酒を持って、一同そそくさと下へ降りた。
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 テーブルの上には既にすぐに酒が呑めるようにと、お取り回し鉢と銘々の八寸というか前菜がセットされている。
 テーブルの真ん中には、この日のスペシャルの「なめこの酒しゃぶ」がしつらえてある。

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箸付:芹胡麻和え
 
 味が濃くて、瑞々しい芹。ただのおひたしと思うなかれ、温泉の湯をさっと通している。これに、柔らかい味の胡麻だれがよく合っている。

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前菜:姫リンゴいくら盛・合鴨ロース・小茄子オランダ・丸十レモン煮・銀杏松景・とんぶりしめじ
 
 さて、まずは生ビールで乾杯!前菜を食べると、ここの料理のレベルの高さが分かる。期待できそうだ。これから始まる宴にわくわくする。
 献立の前菜にある“小茄子のオランダ”は、オランダ煮の事で、「西洋風の茄子の煮物」と云うような意味だ。その昔、外国から長崎に伝わった調理法や調味料使う料理を総称して「オランダ~」と、云っていた。この茄子も一度素揚げしてから、味を付けて煮てある。
 どれも、味つけは濃くはないのに、ひとつひとつにきっちりと味が染みていて、丁寧に作ってある。茄子もオランダ煮を私が作ったなら、もっと茶色に変色してしまうところだ。

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向付:信州サーモン昆布〆

 鱒と鮭をかけ合わせた魚だそうで、色は鮮やかだが、非常にあっさりしていた。山葵醤油で普通の刺身のように食べる訳だが、醤油も山葵も強過ぎるような気がした。つまり、少量でも醤油をつけたら醤油の味しかしないのだ。これだけは少し勿体ないような気がした。例えば、マリネした山芋の千切りなどを巻いたらおもしろいと思うのだが・・・
 
 さて、ここで「なめこの酒しゃぶ」を始めることにする。コンロに火をつけて、鍋の酒を沸かす。なめこは既に温泉の湯にくぐらせてあるから、さっと酒通しすればよい。
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 鍋に火をつけるとすぐに雪塩・かんずり・ポン酢が運ばれてくる。引き上げたなめこを好みに応じてつけて食べるのだ。
 私は、なめこにちょっとかんずりをなすって、ポン酢にさらっと泳がしてたべた。うまい!それぞれに好みの薬味と調味料を模索しているようだが、気付くと全員沈黙である。頬っぺたを落とさないように要注意だ。↓
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 ちゅるちゅると箸で従わせるのに少し苦労するなめこを味わいながら、こういうのが正真正銘の山の幸だろうと思う。
 なめこなんて、四角いビニール袋に入ってスーパーに1年中置いてある。味噌汁に入れるしか能がない茸だと思っていたが、こんな風にれっきとした主役料理になりえる事を知って感激した。

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進肴:地茸の土瓶蒸し(ムセッタ・椎茸・あみ茸・松茸・あわび茸)
 
 山の幸、第2弾。土瓶の中を覗いてみると、あるわあるわ。これだけの天然きのこを食べるのは、昨年の三水館以来だ。
 元来茸類には目がない方だが、私の場合、味覚だけではなく、体調を整えるのに非常に効くのだ。例えば、微熱があって関節が痛むような時、このまま放っておくと間違いなく高熱になるという時でも、茸鍋を食べるとケロリと治ったりする。
 この土瓶蒸しは、、茸のエキスがたっぷり溶けだしたスープに三つ葉の茎の香りが落ち、複雑な香りでとても上品な味わいだ。これを毎日飲むことができたら、病気知らずで生きていけるかもしれない。


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焼物:和牛香り焼き
 
 朴葉の上に乗った特上の牛肉を水コンロで焼いて食べる。焼き加減は、お好みで。T氏は、レアで食べた。他の2人は、ミディアム位で手を打ったようだ。私もそうした。柚子胡椒をちょっと付けて、待ち切れずに酢橘を絞って口に放り込む。柔らかくてとろけるようだ。付け合わせの焼きズッキーニにも朴葉の香りが移って、スモーキーで美味である。
 
 ここで、漸く献立の半分だ。
 
 そうそう、「お取り回し鉢」の説明を忘れていた。この日は、“しょうにいも・芋なます・掛け菜の煮物”だった。このあたりなら、何処の家でも作っていそうな郷土の味だ。これが、古い鉢に盛られ、食卓を囲む人々の間を行き来する。料理の合間合間で、摘まんで食べるのだ。普通の家庭でも、個々に盛りつけないで家族分のおかずを大皿に盛り付けて、それを取り分けて食べることが多いと思うが、そのおかずに当たる料理が、野沢の郷土料理と言う訳だ。
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 見た目、少々地味な料理だが、これがれっきとしたプロの味だ。例えばなますなんて、口直しに少し食べればいいくらいの正月のおまけのような料理だと思っていたが、これは違う。サラダ代わりに皿に取ってパリパリと食べてしまう。ツンとした嫌な酢の感じも余計な甘味もなく、実にうまい。T氏もしょうにいもがことのほかお気に召したようで、「写真を見ただけで、よだれがでるんだよ」と、話していた。掛け菜の煮物は、甘辛の味つけ。アミノ酸たっぷりのうま味があり、味も染みてよく煮えていた。ご飯が欲しくなる一品だ。

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蓋物:枯露柿薯養まんじゅう
 
 初めて食べる料理だ。じゃが芋の中に無花果が入っていた。表面にパブリカを振ってこのまんじゅうを柿に見立てているから、枯露柿という銘なのだろう。菊や芹、榎、木耳などの爽やかななあんに包まれて、とても美味。じゃが芋の新しい食べ方を発見した。恐らくは料理長のオリジナル料理だろう。

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 名物野沢菜は、こんな風に大きな葉に包まれている。私の祖母は、野沢から近いところにいたから、冬は毎年野沢菜を漬けていたが、こんな風に出てきたことはない。仲居さん曰く、乾かないようにとのことで、全くどこまでも心遣いの宿なのだ。感心する。
 そう云えば、さっき散歩に出た時にお土産屋のオヤジから、散々聞かされたのが、野沢温泉以外で加工しているものが沢山あるから注意しろということだった。あまり言うので、引いてしまった。そこで売っている「本物の野沢菜」すら買わずに出てきてしまった。それで結局、住吉屋で食べたこの野沢菜を買って帰った。
 ・・・本音を言うと、この六角形の鉢の方を土産に持って帰りたかった。

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揚物:零余子(むかご)のかき揚げ
 
 山の幸、第3弾。零余子なんて、八百屋でもすっかり見かけなくなったが、たまに零余子ご飯が食べたくなる時がある。素朴さと香りが好きなのだ。
 子供の頃にはこんなものが食べられるなんて知らなかった。ただ、気付くと零余子ご飯が好きになっていたのだが、いつごろどうして食べたのだか記憶にない。
 その零余子が、かき揚げになって出てきたのには、驚いた。今度、自分でも作ってみようと思う。
 零余子と川海苔のかき揚げに、酢橘をちょっと絞って、添えてあるパブリカの塩をパラリ。香ばしいサクサクしたかき揚げに絶妙なアクセントになって実に美味しい。

 献立では「酢物:やまくらげ」とあるが、探しても出てこないので、どうも写真を撮るのを失念したらしい。記憶を辿ると、この料理も素朴ながら、酢の加減がちょうどよく、独特の歯ごたえがあり料理の〆にちょうど良かった。

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(上)留碗:信州味噌仕立 (下)御飯:しめじご飯
 
 美味しいだしがベースの味噌汁は信州味噌の特有の辛味があり、これが麩や青菜などの具を包み込み美味しい。この味噌汁は南部鉄の囲炉裏鍋で持ち込まれ、仲居さんが、丁寧によそってくれた。
 ご飯は炊き込みかと思いきや、新米の香りを殺さないため、温泉でさっとゆがいたしめじを混ぜ込んであるだけだ。焚き込みも好きだが、新米の香りもしめじの香りも楽しめる、混ぜご飯もなかなかよかった。
 一同、満腹である。

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デザート:寄せ柿 長野パープル

 柿のゼリーよせ・・・とでも言ったらいいのか、食感が楽しい和菓子と新種の葡萄だ。この葡萄は、甘味は強くないが、水分がたっぷりでなかなか美味しかった。

 と、云う訳で、今宵の宴は御仕舞。何だかんだ言ってよく食べた。

 あ、そうそうお酒の紹介を。酒は「越乃寒梅 特別本醸造」「飛露喜 特別誂至高」。どとらも、料理に合ういい酒であった。・・・何て書いてはいるが、記憶はさだかではない。
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 いつだったか、学生の頃だったか社会人になりたての頃だったと思うが、銀座で石焼きステーキを御馳走になって、美味しい思いをしたことがある。州之内徹が亡くなって、現代画廊をとうとう閉めるというときに手伝いをしたので、そのお礼にと画廊の管理をしていた人が連れて行ってくれたのだ。
 しばらくは、富士山から切り出した石で焼いたうまいステーキを食べながら、画廊にまつわる思い出話をしていたが、途中からなにやら食べ物の話になった。前後の脈略などはとうに忘れてしまったが、私が「海の幸も山の幸も美味しいから、日本はいい・・・」みたいなことを言った。そうしたら「海の幸はよくわかるけど、山の幸ってなんでしょうね。山菜やキノコや栗の事かな?でも、現代に於いては、それ程メジャーではないですよね。だからと言って、畑で採れる野菜を山の幸と呼ぶのは、僕にはしっくりこないな・・・」と、相手の方は言われた。
 なるほど、「山の幸」と言う言葉は、しょっちゅう使われてはいるが、何を指して「山の幸」と言うのか、「海の幸」ほど明確ではない。山菜やキノコや栗などは、その季節をかすめるように現れて、あっという間に消えてしまうから「海の幸」に対するには、どうも弱いような気がする。
 それ以来、その方とはお会いすることもなく、今に至るが、長年、あのステーキの味と「山の幸」とは何かと言った方の言葉が、私に中に消えずに残っていた。
 でも、どうだろう・・・この住吉屋の料理をあの方がもしも食べたなら、少なからず「山の幸」を感じていただけるのではなかろうか。そんな気がした。

つづく

by oishiimogumogu | 2012-11-01 09:07 |


酒・食・器そして旅のたわごと・・・


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