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鮨の幸せ③


 24日は私の誕生日だったが、その前日、目黒に初めての方々を二人、お連れした。二人とも職業柄かなり食通のお客人だが、驚いたり、笑ったり、食材の話に聞き入ったり、仕舞には親方と記念撮影して、大満足の様子だった。
 今までも、友人知人家族などを連れて行ったが、親方の食材や料理、酒の話、冗談、旨いネタに満足しなかった人はない。後輩の一人はこう言った「いままで使った¥15,000(おまかせで、ほどよく呑んでおおよそ¥15,000~¥17,000くらいだ)で、今日のが一番有意義だった。」
 また、先の命が限られた友人(難病に伏している。現在はもう口から食べることが出来ない)が、「あの鮨が食べたい」と云うので、親方に頼んだら、ネタを選んで小さめに食べやすいようにして、折に詰めてくれた。元気だったころ何度も店に行った友人を我がことのように心配して、お見舞いだとお代も取らずに渡してくれた。友人は、食物を飲み込む力が衰えていたが、1貫づつ心に刻むように食べていた。

 相変わらず「準備中」の札を尻目に、引き戸を引く。
「おかえり!」と、親方が迎えてくれる。
「ただいまぁ~」。今日はどんな酒が出るかと期待しながら、用意してくれていた席に座る。琉球グラスに注がれた、引き込まれそうになるような透明感のある酒を飲みながら、準備中の訳を聞く。ここに出す料理は、氷山の一角。出来上がるまでに、いろんな仕込みをしている。それは、数時間のこともあるし1週間のことも、1年2年と仕込むものもある。だから、常に準備中なのだ。親方はそう言う。
 
 母方の実家は漁師だし、各地の漁師から直接魚を入れているので、親方は海の事情にも詳しい。昨今魚が少なくなっていることには、辛そうな表情も垣間見せる。
 「魚のさ、採り方がしどい(ひどい/親方は江戸っ子なので「ひ」と「し」が違う)んだよ。底引きで根こそぎ採っちゃうから、アンコウのこんなちっちゃい子供だって、しき上げて5匹で5百円とか云って、売っちゃうだよ。そんな深いとこまで、底引きにしちゃいけないよ。でも、漁師も承知だけど、やっぱり追いつめられてんだよね。」
 「どっか(北朝鮮)の国なんか、船で来てガンガンごみ捨てていくから、そこを漁場にしている日本の漁師たちは、ごみ拾ってそれから漁をするんだよ。そんだったて、ごみ拾いにかかる人件費や燃料代は全部漁師持ちだから、たまらないよな。」・・・こんな話がしばしば親方の口をついて出る。聞くたびに政治ってなんだ?!と私は思う。海には潤沢に魚がいて、漁師がまっとうな漁をして、漁場は後継者に引き継がれていかなければならない。そうでなければ、近い将来鮨ネタは全部養殖になってもおかしくないところまで来ているのだ。それでも、選挙対策のための勢力争いにうつつを抜かしている大物政治家さんたちには呆れるほかない。
 
 今は春、労を重ねて、川海苔の香りがする四万十の天然鮎を親方は握ってくれた。四万十の鮎も年々入る量は減っている。
 目を閉じて五感で味わう鮎のなんと清々しいことか。最近、起こった多少の厭な出来事など皆、チャラである。これからも私は、あの引き戸を引き続くけることだろう。鮨の幸せをかみしめながら。


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by oishiimogumogu | 2010-04-30 12:12 | 旨い店

鮨の幸せ②


 一志治夫氏の著書『失われゆく鮨をもとめて』は、読み物としても素晴らしく、細かいところまでいちいち頷きながら読んだ。他に追随を許さない東京の一軒の寿司屋の親方の物語なのだ。読み終わって、私の行く寿司屋はここだ!とひらめいた。本文中にはお店のデータはないけれど、ネットでちょっと検索したらすぐわかった。日を決めて早速予約した。電話には、大女将が出て初めて行くという私のために、店への道順など親切に教えてくれた。一人でも構わないとのことだった。

 当日(4年前の4月だった)は、期待と不安を心に抱き、たどたどしく初めての地へ向かった。全くの住宅街で、こんなところに店があるのかと思うが、そこは本で既に学習済みだ。店に着き、「準備中」の看板を尻目に引き戸を開けて中に入る。カウンター10余席の小さな店であった。座って見回すと色紙が何枚も貼ってあり、その中に大平正芳というのもあって仰天した。他にも俳優やプロ野球選手、テレビでいつも見ているアナウンサーなどが来ているようだ。仰天したことはもうひとつあって、お客の中に一志治夫氏もいた。何たる偶然!その時のことは、一志氏が当時のブログに書いてくれている。

 本の中でミュージシャンの大原礼氏が13種類のつまみを一つ一つメモする場面がある。が、そんなにつまみが出るのは、常連中の常連の有名人だからだろうと思った。それなのに、出てきたのだ私にも。薫物、刺身、乾き物、焼き物、煮もの、揚げ物、香の物、季節のスペシャル料理、珍味などなど・・・
 初めて行ったのに、しかも有名人でもないのに、そういう別なく対応してくれた。きちんと客を大切にしているのだと思った。
 酒もすごい。親方が蔵元から直接入れてくる地酒の数々。それも樽の中取りもあったりする。
 それらのあとようやく、手拭きが出てきて鮨になる。その鮨がまた凄くて、コハダなら白酢と赤酢とかぼすのシャリで3貫頼むことも可能だ。墨烏賊を塩で握ってもらったっていい。白身、貝類、漬けの握り・・・あとは胃袋のスペースがある限り、握ってもらい、仕舞に煮蛤と穴子を頼んで締めた。
 
 親方や一志氏とも少し歓談させていただき、新参者らしく早めに退散したのだが、帰りの道々、ポウっとしてなんだか分からなかった。凄い鮨屋だ。こうして私はここの常連になった。4年目である。しかし、先代からの常連客は20年とか30年とかで、とても歯が立たないが、この頃はこういう重鎮の方からも声をかけてもらったりして楽しい限りである。

・・・つづく 

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by oishiimogumogu | 2010-04-27 19:34 | 旨い店

鮨の幸せ①


 子供の時分から、親に馴染みの寿司屋に連れて行ってもらっていれば、大して苦労はないだろうけど、私のように寿司屋はおろか滅多なことでは外食しない貧乏家庭に育つと、困るのが寿司屋のカウンターデビューである。ウチでは、誰かお客が来たときに鮨の出前を取るのが関の山であったし、少ない親戚の中にもカウンターデビューの手ほどきをしてくれるような人はいない。会社の上司が何度か馴染みに連れて行ってくれたが、大したことなかったのと、上司と同じ店に出入りするのは気が引ける。プライベートで食べているところに鉢合わせなんかしたら、どんなに旨い寿司も喉を通らない。星の数ほどの寿司屋がひしめき合う東京に生まれ育ったというのに、何処に自分に合う店があるのか見当もつかなかった。
 
 しかし、30代になって間もなく、灯台元暗しとはよく言ったもので、当時住んでいたアパートから歩いて3分のところにある寿司屋が良心的な勘定で、わりと良いものを食べさせてくれることが分かった。近所のよしみもあって、早速常連になった。念願のカウンターデビューを果たしたのだ。給料がでると、白木のカウンターに座り、好きなネタの鮨を握ってもらって好きなだけ食べた。「つまみに刺身をちょっと、あとは白身でいいのがあったらそれを・・・」「そうね、そこにあるのは白エビ?それちょうだい。」「あと、締めは穴子。今日は、握らないで巻物にして。」などとやって、満足していた。少々呑んで酔っても、3分でアパートまで帰れる。時々、親を呼んで食べさせたり、友人や後輩が来たときにも良く利用した。
 
 ところがいつの間にか職人が辞め、だんだん鮨を食べに来ると云うより、居酒屋代わりに呑みに来る客が増えた。折角行っても、大将のゴルフ仲間の客たちがのゴルフ談議に、こちらがそっちのけになってしまうこともあった。そのころ歩いて3分から自転車で13分の場所に引っ越したこともあり、だんだん遠退いてしまった。その間に2件ほど、初めて入った店にぼったくられた。銀座でもないのに鮨5巻(普通のネタ)にお銚子1本で¥25,000取られたこともある。やはり、寿司屋というのは私のようなものは相手にしないし足元を見るんだ。そう思って、ちょっと落ち込んだ。そんなときだ「失われゆく鮨をもとめて」という著書に出会ったのは。筆者の一志治夫氏は自身も大の鮨好きで、私とほぼ同じ理由で、行きつけの寿司屋を失った経験を持っていた。そういう切り口から始まったので、私はこの本を一気に読んでしまった。

つづく・・・

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by oishiimogumogu | 2010-04-26 21:44 | 旨い店

塩豚三昧


 拙宅必需品の塩豚は、熱海にある中田野精肉店で作ってもらっている。「塩豚くらい自作すればいいだろう」と言われそうだが、以前はちゃんと自分で作っていた。中田精肉店の塩豚は主に拙宅向けのいわば特注品で、以前電話で自作塩豚の事を喋ったら「その塩豚、オレが作ってやる。」ということになってしまった。塩豚作り自体は大した手間ではないのだが、やはり面倒な時はある。しかしながら塩豚ごときを他人に作ってもらうことに少しだけ心は揺れた。
 数日後、出来上がった塩豚が送られてきた。あまりに良心的で驚いた。滅茶苦茶いい肉なのに、おそらくはデパートの半額くらいだったのだ。せめて手間賃くらい取ればいいのに・・・。と思ったが、肉以外の材料費も上乗せされてない。もち豚塩豚は脂身と赤身がバランスよく、それはそれは旨かった。決まりだ。もう自分で作ることはない。心も揺れない。
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 最近、友人にも知れ渡りそっちの分まで作ってもらている。店としてはありがた迷惑な話かもしれない。しかし、旨いもち豚の三枚肉に塩やスパイスを摺りこみ、月桂樹を付けて真空熟成された特性塩豚は、野菜炒め、チャーハン、焼きそば、パスタ、ラーメン、蒸し豚鍋などなどに欠かせない。届いたその日に半分はボイル(ゆで汁はラーメン用のスープになる!)、もう半分はそのまま小分けして冷凍する。切らすことは許されないのだ。中田屋はほかにもビーフジャーキーやコンビーフなどでお世話になている。ちょっと凄い肉屋だ。
 今日は、一昨日とは打って変わって寒い。降ったり止んだり。パソコンの前で朝から仕事。夕方から陶芸家の諸先生方と寿司を食べに行く予定だから、ブランチは軽めに「塩豚とねぎの焼きそば」にした。
 中田屋さん、これからもお世話になります。


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器:鈴木敬夫 染付リム中皿

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by oishiimogumogu | 2010-04-23 12:06 | 日々の食卓

ピクルスな日

 
 急に暑くなった。半袖で過ごす。25℃、6月中旬の気候だって。つい3日前は雪が降って驚いたのに、地球は大丈夫なのかと心配になる。北極の白クマはどうしているんだろう・・・
 こんな先行き不安みたいな感じで、食意地きわまる私もどことなく食欲が薄い。とはいいつつ、まとめて食べたくなかっただけの事。近所の手作りパン屋でバケットを買って、熱海の肉屋が趣味で作って送ってくれた味噌漬けクリームチーズをぬりたくって食べた。この手合いは大好きだ。テーブルにカッティングボードを置いて、切りながら食べているうちについ予定の枚数をオーバーしてしまうのだ。三鷹のはちや珈琲の豆を自分で挽いて、ネルドリップで淹れたカフェオレをお供にしたら他に何もいらない。こんなことを仕事の合間に3度4度繰り返す。分かってはいるけれど、デブに大敵な行為だ。深く反省した。

 そういえば、昨日は卵明舎からお取り寄せ新鮮卵が届いていたのだった。母親の友人が宇都宮にいて、母宛てに送ってきたのをお裾分けでもらって以来、拙宅にはずっとここの卵が常備されている。これで、紙のように殻の薄い(得体のしれない)卵を食べなくても済むようになったのだ。この卵をゆでて、前から気になっていた卵のピクルスを作ろう!夕方仕事が終わるとおもむろにそう考えた。ゆで卵は、厚手のフライパンに水を1cmくらい入れて、卵を並べ沸騰したら蓋をして4分くらいたったら火を止めて(固ゆでが好きな私は)15分くらい置いておけば、比較的殻が向きやすく、黄身がふっくらする。
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それでも新鮮すぎたため剥きにくかった。まあ、ご勘弁。ピクルス液は、リンゴ酢・水・白ワインにコリアンダーや黒コショウシードなどとシナモンひとかけと鷹の爪。以前使って余ったディルが、キッチンのドライエリアで乾燥していたので、これ幸いと押し込んだ。それに、美味しそうなソーセージをスーパーで買って来て、ボイルしてこれも突っ込んだ。本来は野菜も入れるのだが、既に人参とゴーヤのピクルスが作ってあったので、たんぱく質系の瓶詰になった。

 オリジナルは勝手に師匠だと思わせていただいている鉢山亭虎魚氏のレシピを手抜きして作らせていただきました。

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by oishiimogumogu | 2010-04-21 20:12 | 日々の食卓

春キャベツの季節


 「おとりよせ」・・・気取っているような高級志向のようなヘンな言葉だ。だいたい自分のする行為に「お」を付けて人様に話すこもなかろうと思うのだが、巷では「お取り寄せ」という言葉自体が「お」の字も含めて一つの単語として成立しているようだから仕方ない。「お取り寄せ」は、便利で美味しい。宅配便システムの今日の発展で、日本中の津々浦々の美味しい食材が、居ながらにして手に入るようになった。拙宅でもしょっちゅう利用するし、定番になっているものもいくつかある。また、この季節にはこれ!という食材も産地から送ってもらう。美味しい食材を作ってくれる人々と「お取り寄せ」システムには感謝あるのみ。

 雨が降るし寒い、早めに片づけたい仕事に埋もれている。そういう日の昼には家でラーメンを作る。拙宅にはいつも、旭川から取り寄せる加藤ラーメンがあるので心強い。
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 加藤ラーメンは旭川の製麺所だ。ちぢれ麺で、電話で工場に直接頼むと、ダンボールの箱に入った麺を送ってくれる。タレはお好みで味噌、醤油、塩から選ぶ(別売なので買わなくても良い)。この麺が滅法旨い。我が食彩の師、鉢山亭虎魚先生の云うとおりだ。証拠にたちまちファンができて、皆届くのを心待ちにしている。まとめて送ってもらえば、本品より高い冷蔵便の送料をワリカンにできるからとても助かる。
 
 今日のラーメンは、春キャベツとニラと塩豚のニンニク炒めの具だ。野菜が甘くて香りよく、旨かった。いうことなしだ!


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by oishiimogumogu | 2010-04-20 20:42 | 日々の食卓

プロローグ


 ついに・・・ブログをはじめることになった。お題目は、日々食べたものの記録をメインに、食・酒・旅(←もちろん土地土地のうまいもの)さらには、好きなやきものの事など、思うことを綴ってみようかと思う。
 いつまで、続くか知れやしないし、読んでくれる人が現れるか知れやしない。そんな訳だから、肩肘張らずに、気楽にやってみようと思う。

 さて、金曜の午後あたりから関東地方に雪が降った。なごり雪の歌のようなロマンチックでもなんでもない迷惑なだけの雪だった。翌朝6時ころ外を見ると薄く積っている。お陰で、ここ3~4年恒例の山菜とりに行けなくなった。土曜日に山に詳しい友人と山梨の大月方面まで行く予定だったのだ。毎年山のようにてんぷらに揚げる「タラの芽」を今年は食い逃した。桜が散って後の狂い雪ではいたしかたないが、野生のタラの芽は本当に旨い。てんぷら、味噌漬けと良い酒の友だ。私だけかもしれないが、タラの芽のてんぷらは、何故か相当食っても胃にもたれない。揚げたてをおろしポン酢をさっとつけていただくのだ。忘れたころ食べごろになる味噌漬けもまた、格別である。何とも残念。土曜の午後遅くからようやく晴れ間が見えてきたが、以後それぞれのスケジュールにより、もう行けない。

 仕方がないので、酒だけ呑んだ。静岡、志太泉酒造の純米吟醸である。すっきり透明感があって、すっとのど越しが良かった。酒器は唐津にした。
 
 
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by oishiimogumogu | 2010-04-19 01:14 | 酒・酒器


酒・食・器そして旅のたわごと・・・


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