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浜焼きで朝食を(2日目-その1)


 浜焼きは、各地にいろいろな製法で存在する。出雲先の浜焼きは、元は素朴に漁で揚がった魚を竹串に刺して、その竹串を砂浜の砂に刺して炭火で焼いていた。北国街道が出来る前は、漁師の家は海岸線にあり、家のすぐ裏手が船着き場になっていた。だから、何処の家でも自分の家の裏の砂浜で炭を起こして魚を焼いた。砂は炭火によって熱せられ、全体にまんべんなく、TVCM風に言うと“ふっくらジューシー”に焼ける。
 現在では、海岸沿いに国道が出来て、家の裏手がすぐ浜に直結するとまではいかないが、数件の家で浜焼は行われている。家の敷地内か、土間などに海の砂を運び込み、砂の輻射熱を利用して魚を焼いている。
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 一行6名が泊まった旅館M屋の隣の隣は石井鮮魚店で、ここでも浜焼を焼いている。タイル張りの水槽に海の砂を入れ、炭を高く積み上げ魚を焼くのだ。大抵朝の7時過ぎには、近所のお爺やお婆がやって来て、魚を串刺しにて焼き始める。
 旅館M屋の朝食も大層旨いのだが、ここはひとつこの浜焼を朝ごはんのおかずにしようと思った。M屋には、おにぎりとみそ汁だけを用意してもらい、其々好きな魚を買って来ることにした。宿の目の前の海岸公園の東屋で海を間近に見ながらの朝食としゃれこもうと云うのだ。
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 浜焼が焼かれているそばかから、「僕は赤魚下さい」「私は鯖」「じゃあ、私は烏賊」などと、遠い昔に駄菓子屋の前で小銭を握りしめていた子供に戻ったようにして、目当ての魚を買った。晴天の秋空と穏やかな日本海を眺めながら食べたコシヒカリ新米のおにぎりと浜焼は、旨い事ひとしおであった。
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 朝食後、M屋の鏝絵の間を見せてもらった。鏝絵とは字のごとく鏝で壁や天井に美しい漆喰のレリーフを描いている。伊豆の左官であった長八が有名であるが、M屋創業当時には、そういう職人も珍しくなかった。
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 M屋鏝絵の間の天井。この部屋にはかつて、VIPが招かれて晩さん会を開いた。出雲先は天領地。その当時人口は2万人以上いたらしい。因みに現在は5300人程だ。

つづく
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by oishiimogumogu | 2010-10-31 23:20 |

いざ食卓へ(1日目-その5)

 出雲崎漁港の競りを見物して大満足のご一行様、といいつつも、この時点ではまだそれほどの実感は湧かない様子。ま、その内わかるさ・・・と、思い放っておく。
 お土産物好きのKamに促され、天領の里を軽く冷やかして、出雲先の街並みを見ながら、ふらふらと宿に戻る。途中、“妻切り家屋保存会館”や“焼き物いずもな”どに寄っているうちに、サンセットタイムに突入。
 「あ~早くしないと、夕日がぁ~」一同大慌てで海岸沿いに戻り、カメラを構える。
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 この地に通うようになって4年が経って、漸く日本海に沈む夕日を見ることが出来た。ここは、夕日の名所なのだ。面白いことに振りかえると月も見える。
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 沈みゆく夕日と、それに代ろうとする月の間で秋の日本海が静かに佇んでいた。

 宿に戻ってひと風呂浴びた頃、いよいよお待ちかねの夕食になる。みんなはまだいい。話に聞いてから1カ月や2カ月足らずで、この日を迎えられたのだ。しかし、私は1年待ってやっとこの濱の飯にありついた。彼の地より戻って、このようにキーボードを叩いているが、今となってはまた1年待たねばならない。忍の一字である。

 階下のお食事どころに降りて行くと、銘々の善がしつらえてある。まずはビールで乾杯。料理が運ばれてくるのを見計らい、各々が持ち込んだ酒に自慢のMy猪口。まずは静岡、志田泉酒造のYB12、獺祭、そしてYB21、行きがけの八海山酒造で買った焼酎など入り乱れて、若干1名は赤く発色してハイになっている。その他は、次々運ばれる料理に目を見張りながら、呑みまくる。
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 もう少しみんなマシなことを言うかと思ったが、「うあ、これ旨い」とか「どれから手をつけよう・・・」とか、そのくらいで口数は少ない。
 私は、特大のどぐろに涙の再会を果たし、猫も跨いで通るほどしゃぶりつくす。上品な脂がたっぷりとその身を覆い薄塩加減で香ばしく焼き上げられたのどぐろを食べる人の邪魔はできまい。遠路遥々やってくる私の事をやっとみんな理解したようだった。
 他にもさっき競りに上がっていた魚が食卓に並ぶ。男性ながら極小胃袋に悩むMarを私は一番心配していたが大丈夫そうだ。鮑の醤油バター焼きは、濃厚で風味が抜群だ。そうこうしているうちに毛蟹がどどーんと出てきて、その後また柳鰈の唐揚げも出てくる。
 ほんの3時間前に港に上がった魚達を見て来たばかりなのだ。それがM屋の主人の手に寄って美味しく料理され、食べている。これこそが、出雲崎の実力なのだ。ようやくみんな実感したようだった。

☆この日の献立☆
先付け
・のどぐろの骨煎餅
・いくらおろし和え
・鰯の南蛮漬け
・蛸のカルパッチョ
お造り
・のどぐろ
・鯛
・鮑
・南蛮海老
焼き物
・大きなのどぐろ
・鮑のバター醤油焼き
大皿
・浜茹で毛蟹
揚げ物
・柳鰈の唐揚げ
汁もの
・魚のアラ汁

・新米コシヒカリ
水菓子
・梨
 食べ終わると胃袋が重かった。その重力に負けて、垂直でいるのが辛い。部屋には既に布団が敷いてある。みんなそれに誘われるようにして果てて行った。

つづく
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by oishiimogumogu | 2010-10-30 16:06 |

いざ競りへ(1日目-その4)


 出雲崎の競りは、あまりにも魅力的だ。こんな辺鄙な小さな漁村に揚がる魚の種類の多さは比類ない。それこそ水蛸から河豚まで何でも揚がる。今でこそ少しずつメディアに取り上げられるようになったが、少し前までは知られざる街でしかなかった。

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奥の方にいる赤い帽子の人が漁協の職員。独特のセリあいで、次々競り落とされていく。我々素人には訳が分からない。寺泊の業者や旅館の板前、新潟市内の料亭、魚屋などなど色々な人が仲立ちに来る。

 競りは漁に出られれば毎日行われる。小型の漁船が早朝から出かけて戻ってくるのが、14時過ぎ。いわゆる日帰り漁だ。その魚が夕飯の食卓に上がるのだから、食べることしか能がない私にとっては人知を超えた贅沢なのである。例え銀座で札束を積んでもこれと同じ口福は味わえないのだ。
 揚がった魚を選別して、15時30分には漁協の職員が競り人となって、独特の掛け声のもと次々と仲買人が競り落としていく。あっという間に次々と落札されて、次の箱が並べられる。そんな光景に、KamもMarもYosも興味深々だ。Kazに至っては、自分が仲買人にでもなったような気分で、魚の列の間を漂っている。
 そんな素晴らしい出雲崎ではあるが、御多分に漏れず漁業後継者の問題は深刻なのだ。私はKazで役に立つなら、売り払ってこようと思ったが、あの調子ぢゃ働く前に飯の食い過ぎで、追い返されるのがオチだと思い仕方なく持ち帰った。

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①そのまま刺身でいけちゃうするめ烏賊。似ぎす。鮭の仲間だそうだ。

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②左の端から、赤甘鯛、真鰺/赤ムツ(のどぐろ・小)、真鰺(大)/赤ムツ(のどぐろ・中)、赤ムツ(のどぐろ・大)、柳鰈小~大まで3箱、一番左は赤甘鯛。この甘鯛はすき焼きにして食べると滅法旨い。

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③上:②の拡大 下:鮟鱇(7.5kg)

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④鮭、鱈。もう鱈が採れ始めていた。日本海側では名前と入れるものが少し違うが、冬場の鱈の鍋は絶品だ。佐渡で食べた鍋は海藻と豆腐と鱈だけ。山形の坂本屋では、とんがら汁というちゃんこ鍋風。そしてここM屋では白みそと魚介たっぷり。冬の北国街道を鱈鍋を食べる旅は最高なのだ。

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⑤海女さんが採った鮑。鮑と床節の違いは貝殻の穴の数だとか・・・この鮑も旅館の主人が仕入れてくれていた。

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⑥毛蟹と鱧。毛蟹も夕食に食べた。鱧はかなり大きい。

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⑦馬面剥(ウマヅラハギ)潮際河豚。来月には虎河豚も揚がる。一番右は多分ホッケ?

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⑧水蛸、鮫。落札されたのだろうか?

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⑨左の手前2番目向こう側は不明?手前は黒曹以?右の箱は白鱚?真中は笠子。

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⑩ずらっと並んだ毛蟹。天然黄鯛

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⑪実は雲丹も(左の真ん中)右の手前は玄華の仲間?

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⑫左中央手前は石鯛。右は旨そうなホウボウ

まんべんなく写真を撮ったつもりだが、このほかに的鯛などがあったと思うし、名前が定かでないものもいくつかある。これで、四季折々、違う魚が登場するのだから想像するだけでも凄いことだ。

つづく
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by oishiimogumogu | 2010-10-29 21:04 |

いざ競りへ(1日目-その3)

 年にそうそう出て歩ける身分ではないけれど、年月も重なると結構色々な旅をしてきた。思い起こせば高校生だった時分に能登に蟹を食べに行こうと思い立ち、アルバイトで得た幾許かの金を握りしめ、紅葉も終わりかけた飛騨高山の民宿で一泊し、翌日ヒッチハイクで金沢まで行った。そのトラックの運ちゃんは、パンチパーマで都はるみをガンガンかけていた。時々鼻歌も歌ったりするが無口だった。トラックのキャビンは高い所にあるので、乗っているぶんには気分がいい。途中のドライブインで天ぷら蕎麦をおごってくれ、無事に金沢に私を届けてくれた。
 
 せっかく金沢に来たのだからと、近江市場に行ってみた。私はその時、自分にとってのパラダイスは、これなのだと思った。あらゆる魚、野菜、加工食品・・・今でも目に焼き付いているあの市場の風景が私の旅の原型になった。子供のころ親に連れられて行った箱根や伊豆、友達の家族と同行した軽井沢、林間学校の山中湖、修学旅行の京都・・・そんな旅行しか知らなかった私は17歳にして、初めて自分の旅に目覚めたのだ。
 
 近江市場の蟹を売っている店の前でどのくらい時を費やしたか、やっとの想いで一杯三千円の香箱を買った。おばちゃんに案内されて店の裏へ行くと、七輪があった。買った蟹は、目の前で捌かれて、七輪の網に並べられ香ばしく香りがったった熱々を頬張った。それは卒倒するほど旨かった。
「どうだ旨いだろう。少し飲むか。」そう言って、オヤジはアルミの千鳥の熱燗を甲羅に注いでくれた。初めての日本酒で香箱蟹の味噌を溶かしたのをすすった。初冬の日本海側のどんよりとした気候と一人旅の侘しさ、それらを包み込むような温かい甲羅酒であった。まさに五臓六腑に沁みわたる思いであった。

 あれからどんどん年月がっ経って、がんがん歳もとった。しかし、旅のスタイルの根本は全く変わらない。旨いものを求めて旅をする。それだけのはずであったのに、いつしかそれを取り巻く人と出会って、その出会いがまた次の旨いものへと導いてくれる。そう云う出会いの旅へとこの頃は少し成長したかもしれない。
 
 出雲崎へは、ここ数年“のどぐろ”を食べに通っている。定宿のM屋には忙しいときに、長岡の米農家Tさんの娘さんが手伝いに来ている。その縁で、私は東京に居ながらにして、特A級の混じりけのない米を食べることが出来るようになったのである。

 我々6名は、出雲先へ着くとすぐに、漁協に向かった。宿から歩いて10分ほどの港には、15時30分からの競りの為に、荷下ろしが始まっていた。

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出雲先の漁港。ここは早朝より漁に出ていた船が、午後になると戻って来て、それぞれ揚がった魚を選別し、道箱に詰めて行く。我々は邪魔をしないように見学させてもらう。
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さざえ・やり烏賊・墨烏賊

 港に着いた漁船から、おおきなバケツが降ろされる。なかの魚を選別して、道箱に詰め重さを計って、船の名前の紙の札をつける。その作業の手早いこと。箱がどんどん重なっていく。何度行っても揚がってくる魚を眺めるのは楽しい。初めてこの競りを見る4名は、圧倒されているようだ。こんな小さな港なのに、魚種はびっくりする程多いのだ。こんな漁港は、多くはないであろう。みんなカメラを片手に、歩きまわっている。

つづく
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by oishiimogumogu | 2010-10-28 19:53 |

農家のお米(1日目-その2)


 つぎに一行が向かったのは、長岡で最高の米を作っているTさん宅だ。私は以前からTさんが作る米を分けてもらっていた。電話では何度も話はしていたが、直接会うのは初めてだ。しかも、総勢6名のパーティで押し掛けたにもかかわらず、我々の到着を待って歓迎してくれた。
 
 Tさんは、蕎麦も作っていてその点では、専門家のKamと話が弾んだ。玄蕎麦を噛んで味比べをしたり、蕎麦に与える飼料のこと、玄蕎麦の刈り取りや精蕎麦に至るまで話は尽きない。
 米のこともそうだ。Tさんは米の話をしたら3日3晩でも話し続けるに違いない。米作りに関しては相当な研究をしているし、なにより心打たれるのは、そういった話の端々に米作りをいかに愛しているかが伝わってくるのだ。
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 今年は、夏が長く気温の高い日が続いたため、多くの農家で米に白い筋が入ったりして、収穫高に影響がでているようだが、山の上にあり、ため池の天然水で育ったTさんの田んぼの稲は全くダメージがなかったらしい。その素晴らしい米は、コンテストで8回も優勝している特A級だ。
 KamもYosもMarもこの米を分けてもらうことにした。いくらでも話は聞きたいし、田んぼにも行ってみたかったが、スケジュールの都合で見送りである。次回は是非とも田んぼまで登ってみたいものだ。
 私は密かに、来春にでも田植えを手伝う側ら、山菜採りに来たいものだと考えている。

 帰り際、Tさんの奥さんから、柿を沢山いただいた。米を送ってもらうときでも送料を取ろうとしないTさん夫妻。私の気持ちとして旨い肉でも送って差し上げようと考えている。

つづく
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by oishiimogumogu | 2010-10-27 21:30 |

絶景の蕎麦屋(1日目-その1)

 あることがきっかけで、それまで縁もゆかりもなかった男女が、それぞれが旨いと思う店に誘い合わせて出かけるようになって、そろそろ半年になろうとしている。年齢も職業も住んでいるところもバラバラだが、喰うことと呑むことに関しては、一筋縄ではいかない人間達だ。辛うじて末席に連なっている私などは、毎回目から鱗が落ちて、恐れ入る店ばかりだ。
 最初は、月一回のペースだったのが、最近じゃ月二回のペースで食べ歩き、ついに2泊3日で旅にも出かけてしまった。言いだしたのは私だが、まさか会社を休んでまで行くと言いだすとは思わなかった。ところが、みんなさっさと年次有給休暇を申請し、ネット掲示板には「ぢゃ、宜しく頼む。」と書き込みしてあった。と、言う訳で私は宿に予約を入れ、NEXCOのHPと頸っ引きで、タイムテーブルを作成し、酒蔵とワイナリーに見学の手配をして、蕎麦屋の席をリザーブ、3時間がかりでプランを練り上げ、予算計上して深夜2時近くにようやく掲示板にアップした。
 こうして、会社を休んでまで旨いものを貪り喰おうとする総勢6名が、新潟に向けて発進した。10月22日のことである。

 出発に際し、私は“朝ごはん禁止令”を出しておいた。しかし、これを無視して、カレーパンを貪る男、Kaz。待ち合わせの高坂SAのベンチで、インシュリン注射を打つSpo。重度の糖尿病だ。私は、この二人と同行して来て、蕎麦通のKamが運転するもう一台の車を待つ。通信係のYos女史から、覆面に貼り付かれて、スピードが出せないので、予定時間より遅れるとメールが入る。待つこと45分。初めからオーバータイムだ。チッ・・・
 
 やっと、全員集合である。車から降りて来た日本酒党のMarとYosとの挨拶もそこそこに、最初の目的地、そば屋長森に向かった。六日町ICを降りて、約20分で八海醸造第二浩和蔵に到着。この敷地内に目指す長森はあるのだが、その前に折角、八海山酒造に来ているのだから、DVDによる酒蔵見学をすることにしていた。
 我々は八蔵資料館に立ち寄った。「本社から、仰せつかっておりますから。」と、VIP扱いで60インチのテレビ画面に映る酒作りノウハウDVDを見た。こういう大手の蔵は、殆どがコンピュータ管理のオートメーションなのだが、それでも杜氏がいないと酒が作れないという。杜氏がその経験と勘で下す判断にはコンピュータも遠く及ばないようだ。

 そしていよいよ蕎麦である。長森は目の前に蕎麦畑が広がるローケーションで、こんなところでは何日でもぼーっとしていたい気分にさせられる。

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              そば屋長森の外観。裏に蕎麦畑が広がる
 
 言っても聞かないKaz以外は、朝食禁止令を守っていたので腹ペコである。早速、十割蕎麦と田舎そば、それに天ぷらの盛り合わせを頼んだ。蕎麦はつゆが選べる。しかし欲張りの我々は、両方試してみたいのだ。

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               上:鷹巣十割蕎麦(鷹巣で採れた蕎麦粉を使用)
               左のつゆは濃いめ、右のつゆはあっさりめ
               下:田舎蕎麦

 濃いめのつゆは、出しの香りが出ていてしっかりとした味わい。私は、田舎蕎麦を組み合わせた。歯ごたえのあるしっかりした蕎麦と合うように思ったからだ。十割蕎麦は、繊細だが香りが良いのであっさり目のつゆに浸けた。先週から、新蕎麦を出し始めたというこただが、日本料理の修行をした板さんの打つ蕎麦もなかなか味わい深いものであった。
 味わい深いと言えば、古民家を移築・改装した店からの景色だ。眼前に刈り入れが済んだ蕎麦畑が一面に広がり、窓から心地よい風が入ってくる。静かで見飽きることのない絶景である。こんな蕎麦屋は、私が知る限りない。
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 続く小道を少し上がると、この辺りが見渡せる展望東屋にはいつも忙しなくて、行けない。今回も同じであった。どうにか来年は、あの東屋に辿り着きたいものである。

つづく
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by oishiimogumogu | 2010-10-26 21:54 |

ピンクのボウルとぐい飲み


 昨日、新宿伊勢丹に行った。デパートなど滅多に行かないのだが、以前から楽しみにしていた『ひろ窯』さんの陶展を見て来たのだ。カラフルでユニークな作品と伝統的鼠志野や黄瀬戸、染付・・・。奥様が絵付けをされたという野の花の染付は、とても繊細で落ち着いた作品。一方、お嬢様が色をつけているものは、抽象絵画のよう。色鮮やかで、楽しい作品。
 作家ご本人様とは、初めてお会いしたというのに、ブログのお陰で話が弾み、ちょっとここではお披露目できないウラ話などに盛りあがり、とても楽しいひと時だった。

 私は、薄いピンクの地に赤の少ない麦わら手のような線が印象的なボウルと鼠志野のぐい飲みをゲットさせていただいた。
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 ボウルには、どんな料理を盛りつけようか・・・
 例えば、キャベツの千切りとその上に揚げたてのコロッケを乗せてもみたい。あるいは、焼き栗を山盛りというのも悪くはないだろうし、カフェオレやチャイを飲んでも良さそう。また、このボウルなら、ショートパスタやニョッキでも楽しそうだ。素敵な器使いが出来たら、写真を撮ってUPしたいと思っている。
 鼠志野のぐい飲みは、2個あるうち散々迷っていたら、作家本人の「あなたには、こっちの方がいい」との一声で決めた。
 今月、後半に飲み食いの旅に出るつもりなので、旨い酒を飲むためのお供に連れて行こうと思っている。このぐい飲みがどのように酒を演出してくれるか、今から楽しみである。

 ひろ窯さん、コーヒー御馳走様でした。そして、楽しい時間をありがとうございました!


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by oishiimogumogu | 2010-10-14 22:34 | 器・食器・調理器具

台風が去った後に②

 今朝、7時少し過ぎだ。家のまん前で、交通事故が起きた。自転車に乗った若い男性が、これもまた若い男性の運転する車に轢かれたのだ。何かがぶつかる音を聞いて、慌てて外を見たら、前輪がぐっしゃり歪んだ自転車と道路に放り出されて横たわる人間が、目に入った。
 車の男性は、慌てて降りてきたが、まず先に何をするか分からないようであった。携帯があるなら、救急車を呼んで、警察に電話するように言って、住所を教えた。その間に道路に転がったままの若い男性に声をかけたら、なんとか動けそうだったので、道路の端に移動させた。道路に人が寝ていても、車はひっきりなしに来てよけて通る。
 やがて、救急車が来て、警察も到着した。私は、家に戻ったが、現場検証は2時間近くやっていた。
 危険を何度訴えても形の上の対策しか取ってこなかった警察には愛想が尽きる。このあたりでは事故は繰り返し起きているのだ。
 幸い救急車で運ばれた男性の怪我は、見た感じ大事には至らなさそうだったが、今後もそうだとは限らない。いくら言っても分からない警察は、言葉の通じる警察になる日が来るのであろうか・・・

 この春、新酒もそろそろ出来上ってくる季節、私の母親と、私の友人の母上は40年の交友をも吹き飛ばす大喧嘩をした。そのとばっちりたるや凄まじいものがあったが、私はひたすら耐えるしかなかった・・・

 この人たちの仲が良かったころ、年中旅行に出かけていた。その宿の選定と予約を私が世話していたと云うだけのことで、何で老婆達のお互いに正しいと主張する言い分を聞かされなければならないのか?訳が分からない。
 ただ一つ私にできることは、こちらから聞いたことをあちらの耳には一切入れないようにすることだけだった。二人の主張がどんなに尊大なことであれ、喧嘩の原因は下らない事なのだ。お互いがそれを理解して悔い改める他、何も解決しない。それが、出来るか否かは別として、誰かがしたり顔で介入したりすれば、この場合火に油を注ぐようなものなのだ。
 私は、二人が言ってくることを聞くだけは聞いたが、それ以上のことは何もしないでいた。面倒は真っ平ご免だ。

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 天然舞茸と蕪の煮浸し。
 無花果と鮑の蒸しもの。
 実はこの他に松茸の土瓶蒸しやいひ飯、デザートも出たのだが、食い意地優先で写真を取り忘れた。

 ・・・台風は、やがて温帯低気圧に変わる。数か月の後、台風「ローバ(老婆)」も、ようやくほとぼりも冷めてきて、喧嘩も少しづつ過去の出来事になり始めていた。
 そんなころ、友人の母上が青葉台まで歯医者に通う私の動向を知り、迷惑をかけたお詫びにと、食事に誘ってくれた。まあ、断る理由もないので、御一緒させていただいた。以来、「婆さんの唯一の楽しみだから。」と譲らず、歯科検診のスケジュールを報告することになった。
 ここはあざみ野『馳走きむら』という和食の店である。京都で修行をした御主人の料理は、出しがとても美味しい。数々の秋の料理を大いに楽しませていただいた。台風が去って、私にも実りの季節がやってきたということか・・・まあ、耐えた甲斐はあったのかもしれない。
 次も楽しみである。だが、このことは母には内緒なのだ。。。

おしまい
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by oishiimogumogu | 2010-10-14 15:42 | 旨い店

台風が去った後に①

 何を隠そう、私は歯を大事にしている。毎日トータルで20分以上は歯磨きに費やしているし、4か月に一度、歯科検診と称してデンタルクリーニングを念入りにやってもらっている。
 紆余曲折あって、私には歯と歯茎の健康のことなど気にもかけない時期があった。その結果、歯と歯茎にはかなりのダメージを被って、何本かの歯を失うことになってしまった。仕事が最優先だったと言えば、聞こえもいいが、ズボラな性格がなせる業である。悔いても悔いきれない。
 何故なら、食べて消化して出す器官が全て順調にいかなければ、旨いものを味わうことは出来ない。それで私は決心をして、青葉台にある佐氏歯科医院の門を叩いた。通うのに有に2時間は掛かる遠いクリニックだが、近所の訳のわからない歯医者で散々な目にもあった経験から、信頼のおける医者でないとならなかった。歯と歯茎の為だったら多少の犠牲は止むを得まい。私の決心は硬かった。
 それになりより、この佐氏先生は無類のグルメである。診療中、あそこの店が旨いだの寿司屋にはいつ行くんだだの医者と患者の境目を押しのけて盛り上がる。内緒だが信頼の原点はそこにあるのだ(勿論、医師としての腕も信頼している。念の為)。

 毎回、歯科検診を終えると一つ楽しみがある。それは、友人の母上が食事に誘ってくれることだ。
 この小学校からの友人とは、20年以上会っていないが、母親同士が仲が良かった為に、なんとなく近況はわかっている。これからも特に会う予定もないが、友達を止めたわけではないので、元気でいることが分かってさえいれば、それでいいのだ。向こうも同じ想いに違いない。

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 秋の焼き物(鰆の過ぎ板焼き、柿と春菊の白味噌あえ、茗荷の酢漬け、栗の甘皮煮、焼き銀杏、蓮根チップス)
 胡麻豆腐
 お造り(烏賊、はまち、鯛、平目)

 しかし、そういう地平線が続くような人間関係とは相容れず、一方で火山が爆発するような人間関係も存在する。
 その友人の母上と私の母親は、私達子供を通じて知り合って40年間、親友の間柄であった。それが、今年の初めに下らないことで大喧嘩になり、ただいま絶交状態なのだ。
 二人とも頑固で、物事を1方向からしか見渡せない性分が祟って、今後も交友が復興するのか全く分からない。
 「あ~あ、やってくれたねぇ・・・」内心そう思ったが、後の祭りだ。
 友人の母上から“これこれこういう理由で、あなたのお母様とは、このようなことになりました。あなたには多大なご迷惑を掛けて申し訳ない。”という便りを貰い。私の母親からは、逆上した電話が入る。
 「ちょっと待て。あなた方の喧嘩に私はなんの関与もしてないのだから、何の責任もないではないか・・・」と内心思うのだが、70歳を過ぎた老婆達の大喧嘩は、どす黒い台風の空のように押し寄せてくる。私の都合など全く関係なく、暴風雨が吹き荒れる。台風とは天災なのだ。諦めるほか仕方あるまい。


つづく
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by oishiimogumogu | 2010-10-14 14:38 | 旨い店

ブッタネスカマイナス


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 オリーブオイルで玉葱の微塵切りとベーコンと黒オリーブを炒め、トマトソースを加える。茹であがったパスタを投入。茹で汁少々も忘れずに。最後に胡椒で味を調えて出来上がり。
 本当はここにアンチョビを加えて、ブッタネスカになるが、これで十分いける。勿論食べる直前にEXバージンオイルとパルミジャーノを摺り卸す。アンチョビが無いので、マイナス。

 ブッタネスカは、日本語にすると“娼婦風”ということらしい。娼婦風としたのには諸説あるようだが、基本的におひとり様のランチを取ることが多い娼婦が、なるべく手間をかけずに、あるもので作ったという説が私は好きだ。古い時代のナポリの娼婦の話なのだろうが、時代と国境を越えて、ブッタネスカを日本人の私がいそいそと自分自身の為に作っている。
 私の職業は娼婦ではないが、なんとなくわかったような気分で、当時の娼婦のような演出を自分にしてみたりする。不思議とこのパスタを食べるときだけ、無意識にそんなことをやってしまうのだ。
 
 それで味の方だが、正直なところ、旨かった。



仕事中の気分転換に
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by oishiimogumogu | 2010-10-13 00:05 | 日々の食卓


酒・食・器そして旅のたわごと・・・


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男の手作り燻製 ― 自慢の肴で今宵も一杯

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