鮨の幸せ①


 子供の時分から、親に馴染みの寿司屋に連れて行ってもらっていれば、大して苦労はないだろうけど、私のように寿司屋はおろか滅多なことでは外食しない貧乏家庭に育つと、困るのが寿司屋のカウンターデビューである。ウチでは、誰かお客が来たときに鮨の出前を取るのが関の山であったし、少ない親戚の中にもカウンターデビューの手ほどきをしてくれるような人はいない。会社の上司が何度か馴染みに連れて行ってくれたが、大したことなかったのと、上司と同じ店に出入りするのは気が引ける。プライベートで食べているところに鉢合わせなんかしたら、どんなに旨い寿司も喉を通らない。星の数ほどの寿司屋がひしめき合う東京に生まれ育ったというのに、何処に自分に合う店があるのか見当もつかなかった。
 
 しかし、30代になって間もなく、灯台元暗しとはよく言ったもので、当時住んでいたアパートから歩いて3分のところにある寿司屋が良心的な勘定で、わりと良いものを食べさせてくれることが分かった。近所のよしみもあって、早速常連になった。念願のカウンターデビューを果たしたのだ。給料がでると、白木のカウンターに座り、好きなネタの鮨を握ってもらって好きなだけ食べた。「つまみに刺身をちょっと、あとは白身でいいのがあったらそれを・・・」「そうね、そこにあるのは白エビ?それちょうだい。」「あと、締めは穴子。今日は、握らないで巻物にして。」などとやって、満足していた。少々呑んで酔っても、3分でアパートまで帰れる。時々、親を呼んで食べさせたり、友人や後輩が来たときにも良く利用した。
 
 ところがいつの間にか職人が辞め、だんだん鮨を食べに来ると云うより、居酒屋代わりに呑みに来る客が増えた。折角行っても、大将のゴルフ仲間の客たちがのゴルフ談議に、こちらがそっちのけになってしまうこともあった。そのころ歩いて3分から自転車で13分の場所に引っ越したこともあり、だんだん遠退いてしまった。その間に2件ほど、初めて入った店にぼったくられた。銀座でもないのに鮨5巻(普通のネタ)にお銚子1本で¥25,000取られたこともある。やはり、寿司屋というのは私のようなものは相手にしないし足元を見るんだ。そう思って、ちょっと落ち込んだ。そんなときだ「失われゆく鮨をもとめて」という著書に出会ったのは。筆者の一志治夫氏は自身も大の鮨好きで、私とほぼ同じ理由で、行きつけの寿司屋を失った経験を持っていた。そういう切り口から始まったので、私はこの本を一気に読んでしまった。

つづく・・・

by oishiimogumogu | 2010-04-26 21:44 | 旨い店


酒・食・器そして旅のたわごと・・・


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