鮨の幸せ②


 一志治夫氏の著書『失われゆく鮨をもとめて』は、読み物としても素晴らしく、細かいところまでいちいち頷きながら読んだ。他に追随を許さない東京の一軒の寿司屋の親方の物語なのだ。読み終わって、私の行く寿司屋はここだ!とひらめいた。本文中にはお店のデータはないけれど、ネットでちょっと検索したらすぐわかった。日を決めて早速予約した。電話には、大女将が出て初めて行くという私のために、店への道順など親切に教えてくれた。一人でも構わないとのことだった。

 当日(4年前の4月だった)は、期待と不安を心に抱き、たどたどしく初めての地へ向かった。全くの住宅街で、こんなところに店があるのかと思うが、そこは本で既に学習済みだ。店に着き、「準備中」の看板を尻目に引き戸を開けて中に入る。カウンター10余席の小さな店であった。座って見回すと色紙が何枚も貼ってあり、その中に大平正芳というのもあって仰天した。他にも俳優やプロ野球選手、テレビでいつも見ているアナウンサーなどが来ているようだ。仰天したことはもうひとつあって、お客の中に一志治夫氏もいた。何たる偶然!その時のことは、一志氏が当時のブログに書いてくれている。

 本の中でミュージシャンの大原礼氏が13種類のつまみを一つ一つメモする場面がある。が、そんなにつまみが出るのは、常連中の常連の有名人だからだろうと思った。それなのに、出てきたのだ私にも。薫物、刺身、乾き物、焼き物、煮もの、揚げ物、香の物、季節のスペシャル料理、珍味などなど・・・
 初めて行ったのに、しかも有名人でもないのに、そういう別なく対応してくれた。きちんと客を大切にしているのだと思った。
 酒もすごい。親方が蔵元から直接入れてくる地酒の数々。それも樽の中取りもあったりする。
 それらのあとようやく、手拭きが出てきて鮨になる。その鮨がまた凄くて、コハダなら白酢と赤酢とかぼすのシャリで3貫頼むことも可能だ。墨烏賊を塩で握ってもらったっていい。白身、貝類、漬けの握り・・・あとは胃袋のスペースがある限り、握ってもらい、仕舞に煮蛤と穴子を頼んで締めた。
 
 親方や一志氏とも少し歓談させていただき、新参者らしく早めに退散したのだが、帰りの道々、ポウっとしてなんだか分からなかった。凄い鮨屋だ。こうして私はここの常連になった。4年目である。しかし、先代からの常連客は20年とか30年とかで、とても歯が立たないが、この頃はこういう重鎮の方からも声をかけてもらったりして楽しい限りである。

・・・つづく 

by oishiimogumogu | 2010-04-27 19:34 | 旨い店


酒・食・器そして旅のたわごと・・・


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