蕎麦を極める(3日目)

 仕事がバタバタしているし、松茸山には行かなきゃいけないし、大好物のカキフライも食べに行かなければいけない。はたまた新進気鋭の和食ダイニングで会合があるし、無性に焼鳥が食べたくなって銀座にも行ってしまったし、そんなことで、ネタは溜まる一方なのだが、記事を書くヒマがない。ブログ更新は、非常にスローペースな展開を余儀なくされているが、ネタは溜まる一方なのである。

 大呂庵は、朝の食事もきらめきの白米飯が旨い。
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何のことはない、ひじきの煮つけや、あえ物、野菜の炊き合わせなどであるが、朝早くから宿の方々のご尽力により、作りたての料理を食べさせて貰えた。こういう何でもない普通のおかずこそ、出しを取ってきちんと作られていないと困る。作り置きしたものをレンジで温めただけとか、業務用の総菜なんかが出てくると、それこそ興ざめだ。その点、この宿はとても良かった。

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 呼び鈴の亀。頭の部運を軽く叩くと、ベルが鳴り、用事を聞きに来てくれる。ご飯のお代わりが欲しいとか、ビールの追加を頼む時などに使う。宿の備品である。kazは、不届きにもこの亀をくすねようとして、顰蹙をかう。

 この日は、190km離れた信州の小布施まで一気に行く予定だ。朝食後、そそくさと荷造りをして、チェックアウトの大分前に宿を発った。女中さんがひとり駐車場まで見送ってくれた。車を出すときに深々と頭を下げて、その姿がとても印象に残っている。

 さて、高速を飛ばし、途中のトイレ休憩もそこそこに、我々が向かったのは、信州小布施の“せきざわ”という蕎麦屋である。この蕎麦屋に行くことを事の他楽しみにしていたのは、karである。なにしろ、蕎麦通の間では知れ渡ったせきざわは、自前の蕎麦畑の蕎麦粉で蕎麦を打っており、蕎麦もつゆも大変なこだわりである。
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 多少道に迷ったものの11時少し前には到着した。しかし、蕎麦屋に隣接した専用駐車場は、後2台の空きスペースしかない。運良く、そこに駐車できた。開店は11時30分だ。それなのに既に3組ほど既に待っている。我々もそれにい互い並んで待っていると、その後も続々と客が集まってくる。日曜日と言うこともあるのだろうが、車のナンバーは殆ど他県ばかりだ。
 実は、まさかここまで人が来ているとは思わなかった。日曜日の昼は、予約をい受け付けないが、開店と同時なら大丈夫だろうと思っていた。しかし、早めに到着したのが功を奏した。開店と同時では、蕎麦が売り切れ御免となった可能性が大きい。
 とにかく、kamも私も2年ぶり、他の人ははじめてだが、なんとか売り切れる前に、せきざわの蕎麦にありつけた。わざわざここまでやって来て、残念でしたでは、目も当てられない。プランナーとしては、ホッと胸をなでおろした。

 11時30分きっかりに、女将が店を開けた。6人全員が座れるテーブルに案内された。早速、メニューを見て、茜という3色蕎麦に決めた。せいろ、胡麻切り蕎麦、鴨南蛮のセットだ。それに「むらくも」というデザートも頼んだ。以前来た時に、デザートが滅法美味しかったことを思い出したのだ。私が前評判を聴かせていたので、糖尿病のspo以外が全員デザートをリクエストした。
 そうしている間にも、表に並ぶ客の行列は長くなり、女将は整理券を配り始めた。

 さて、いよいよ3色の1色目、せいろ。とにかく香りが良い。蕎麦特有の冷たい心地よい口当たり。蕎麦が纏う水分がちょうどバランスよく、気持ちよく喉を通る。だがしかし、このつゆの美味しさは何なのだ。元来、蕎麦つゆは、濃いと塩辛くなると思い込んでいたが、違う。どことなくトロンとした舌触りの蕎麦つゆは、濃厚な出しの風味はあるものの、飲みほしても喉に残る辛みが全くないのだ。前回来た時も驚いたが、今回も改めて驚愕した。酒に例えると、無ろ過生原酒のような感じだった。蕎麦もさることながら、これで飲む蕎麦湯まで気持ちは巡り、薬味の葱を少しだけ残した。
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 2色目は、胡麻切り蕎麦。これも傑作だ。と言うのは、胡麻の香りがするのに、蕎麦の香りを殺していないのである。1色目のせいろより、角が立ってきりりとした蕎麦は、ほのかな苦みが感じられ、完成度が高い逸品だ。Marは、この胡麻切り蕎麦が、とても気に入ったようで、唸っていた。満腹中枢が異常に発達しているせいか、何を食べてもすぐ満腹になるのに蕎麦だけは別腹のようである。最近、そのことを発見し、本人も自信がついてきたようだ。
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 その次の3色目は、鴨南蛮である。薄醤油仕立てのつゆに泳ぐ蕎麦は、上品な味わいだ。温蕎麦でも全く崩れることなく、一本一本の噛み応えがある。またまた、温つゆも非常に旨い。おまけに鴨は靑首なのか、濃厚なコクがあった。肉はしっかりしているのに、硬くない。鴨とくれば葱だが、焼きネギの香ばしさがアクセントとなり、心憎いまでに全体のバランスが整った蕎麦であった。この蕎麦は、何杯でもいけると思った。
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 最後は、デザートのむらくも。蕎麦粉3割の栗ようかんだ。最初、女将のペースで焦ってしまい、メニューにデザートが見つけられず、ないかと思ったが、勇気を出して聴いたところ、柱の張り紙を指して「今日は、むらくもです。」と、言われた。後で落ち着いて確認するとメニューのあちこちに書かれているのを目ざとくYosが発見。一同大笑いした。
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 「むらくもでございます。最初の半分は、そのまま召しあがって、残りにこちらのブランデーを垂らして召しあがって下さい。」へえ~、ブランデーねぇ。しかし、これには参った。しっとりした栗羊羹には、口に運ぶとふわりと分解してしまうが、確かに一瞬、蕎麦掻の舌触りが感じられ、抑えた甘さが心地よい。しかし、一旦ブランデーを数滴垂らすと、全く違う味わいになる。ブランデーの風味とマッチングしたむらくもは、まるで羊羹とは思えなかった。和菓子の粋を超え、マロングラッセのような香りに包まれる。そして甘さが上品に引き立つのだ。これでは、そこらへんの和菓子屋はお手上げだろう。近所にあったら、週に一度は買いに行くのにと思った。
 やはり、せきざわは人気があるわけだと思いながら、会計を済ませて外に出ると、売り切れ御免の看板が掲げられていた。


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 蕎麦屋せきざわを味わい、一軒道の駅に立ち寄ってから、帰路に着いた。多少渋滞もあったものの思ったほどではなかった。寄居の手前あたりで、本格的に雨が降ってきた。これが、翌日から天気を狂わせ週末には、季節外れの台風の騒ぎになった。実は、最初の計画では、この台風のさ中の予定になっていた。たまたま宿が空いていなかったので、一週前に繰り上げたのだ。その結果、またとない侯天気に恵まれた。天にも感謝である。
 車2台に3人ずつ乗車するので、2~3度SAに立ち寄る。立ち寄るSAは車内の無線器で決めた。最後のSA休憩のときには、日も暮れかかっていた。これが、この旅程で全員が顔を合わる最後であった。みんな、とても楽しかったと言ってくれた。なんだか東京へ戻るのが名残惜しい。
 2泊3日なんてあっという間だった。しかし、仕事を持っていれば、旅行と言ってもこの位の日程が限度だろう。日本人も早く欧米並みにバカンスを楽しめる時代が来ればよいのにとつくづく思った。

 結構、盛りだくさんで忙しない旅になってしまったかもしれないが、天気に恵まれたのは何よりだった。どうなるか分からないけれど、来年も酒と食をテーマに楽しくて、旨い旅ができたらいいなと思う。

おわり
by oishiimogumogu | 2010-11-19 01:49 |


酒・食・器そして旅のたわごと・・・


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