戻り鰹を食べに行く⑤
昨日はまた性懲りもなく蒸し暑かった。出かける時にアブラゼミの鳴く声を聞きうんざりする。9月も末だと云うのにいつまで夏やってるんだか・・・。まあ、ブログの更新ページを開けば、思わず暑さを愚痴ってしまっていたころと比べたら大分ましだったが。
夕方某鮨屋の野外ステージで大汗を書いているT氏を見て、地球温暖化を切実に憂う気分になった。
周囲の何人かから「この頃、頑張っているじゃん。ブログ。」などと云われる。小間切れでもやらないよりはいいのかと思う。コツコツとやるのはどうも苦手だが、今はそれしかできない。ちりも積もれば山となると云うことだからもう少し頑張ってみることにする。
前置きはこれくらいにして、次の料理。「造り。戻り鰹たたき。菜味たっぷり ちり酢」と、献立には書き記されている。春の初鰹は刺身だったが、脂の乗った戻りは、軽く炙ってたたきにして出してくれた。
朝市で仕入れたルコラを敷きその上にとろけるようにまったりとした戻り鰹。親方が目利きしてくれているだけあって、極上の一品だ。香味野菜と胡麻がたっぷりトッピングされていて、それをちり酢(橙の果汁と醤油、それに出汁を加えた合わせ調味料。ふぐちりなどを食べる時に出される。)に大根卸しを加えたタレに付けていただく。鰹好きにはたまらない。ああ、勝浦にいるんだと、しみじみ実感する。ここは、鰹の漁場なのだ。
お給仕をしてくれているIさんが云った。「実は、私の祖父は猟師で、鰹はしょっちゅう食卓に上がったけど、美味しいなどと思ったことはなかったんです。でも、ここで働くようになって、鰹の美味しさがわかりました。」そんなものかなと私は思った。
そう云えば、この離れが出来る前、他のお客さんもいる店内で、鰹ばかりを何人前も頼んで食べているのは我々だけだった。勝浦まで来て、なんで鰹を食べて行かないのかと不思議に思っていたと話すと、若旦那は「鰹って、そんなに旨い魚と思われていないんですよ。ちょっとクセはあるし。料理屋に来てまで食べたいと思わないんでしょうね。鰹のホントの美味しさは、あまり認知されていないんです。」そんなものかなと再び思う。中むらは県外、主に東京の客も多い。でも、江戸っ子の血が騒ぐなどと息巻いて、毎年のように訪ねたのは私達くらいだったようだ・・・淋しい。
だが考えてみれば、私は東京で殆ど鰹を食べない。魚屋でも買わないし、居酒屋で「初鰹入荷」とか「本日のお薦め戻り鰹」などと書いてあっても、決して頼むことはない。唯一、行きつけの鮨屋で出してくれるお造りを口にするだけだ。勝浦でこうして鰹を食べてしまえば、東京の大方の店で出されるものは鰹に見えないのだ。
もう6年程前になるが、私よりン十年も歳喰っている両親を初めて中むらに連れて来たとき、「初鰹だとか騒いで、なんでこんな所までわざわざ食べに来るの?と思ったけど、こんなに美味しいのね。知らなかった・・・」と云ったのを思い出した。その年の秋、私は再び両親を連れてきたが、初鰹とは一味違う戻り鰹を堪能していた。そして、そのことは今でも話題に上る。
献立には、鰹のお造りしか書れていないが、本鮪中トロと鯛の刺身も出してくれた。鰹もさることながら、どちらも食べごろで旨い。特に鮪は、微妙な脂の入り加減が最高だ。時々、中トロの旨いのがあれば、大トロなんていらないよという声を訊くが、イマイチ同意しかねていた。鮪はやっぱり大トロが一番旨いと思っていたのだ。遅まきながら私は“旨い中トロ”の味を漸く知り、やっとその旨さに開眼した。
鯛も負けていない。箸先で山葵を乗せて、特製醤油にちょっと付けて口に運ぶ。ぷりっとした歯ごたえ。鯛ならではの、凄然とした味わいに思わず唸る。刺身とはこうでなくては嫌だ。たまに、水っぽくて脂っぽい刺身の盛り合わせに出くわすこともあるが、そう云う時は「ごめん。今日ちょっと食欲無いんだ。みんな食べていいから(汗)」と、云って取り繕うしかない。
酒は“出羽桜 旨吟 吟醸酒 限定”山形の酒。これも口開け。優しい口当たり、お米のうま味が広がる柔らかな味わい。しかし次から次へとよく出てくるし、よく飲むよなぁ・・・
少し休憩します。
つづく
夕方某鮨屋の野外ステージで大汗を書いているT氏を見て、地球温暖化を切実に憂う気分になった。
周囲の何人かから「この頃、頑張っているじゃん。ブログ。」などと云われる。小間切れでもやらないよりはいいのかと思う。コツコツとやるのはどうも苦手だが、今はそれしかできない。ちりも積もれば山となると云うことだからもう少し頑張ってみることにする。
前置きはこれくらいにして、次の料理。「造り。戻り鰹たたき。菜味たっぷり ちり酢」と、献立には書き記されている。春の初鰹は刺身だったが、脂の乗った戻りは、軽く炙ってたたきにして出してくれた。
お給仕をしてくれているIさんが云った。「実は、私の祖父は猟師で、鰹はしょっちゅう食卓に上がったけど、美味しいなどと思ったことはなかったんです。でも、ここで働くようになって、鰹の美味しさがわかりました。」そんなものかなと私は思った。
そう云えば、この離れが出来る前、他のお客さんもいる店内で、鰹ばかりを何人前も頼んで食べているのは我々だけだった。勝浦まで来て、なんで鰹を食べて行かないのかと不思議に思っていたと話すと、若旦那は「鰹って、そんなに旨い魚と思われていないんですよ。ちょっとクセはあるし。料理屋に来てまで食べたいと思わないんでしょうね。鰹のホントの美味しさは、あまり認知されていないんです。」そんなものかなと再び思う。中むらは県外、主に東京の客も多い。でも、江戸っ子の血が騒ぐなどと息巻いて、毎年のように訪ねたのは私達くらいだったようだ・・・淋しい。
だが考えてみれば、私は東京で殆ど鰹を食べない。魚屋でも買わないし、居酒屋で「初鰹入荷」とか「本日のお薦め戻り鰹」などと書いてあっても、決して頼むことはない。唯一、行きつけの鮨屋で出してくれるお造りを口にするだけだ。勝浦でこうして鰹を食べてしまえば、東京の大方の店で出されるものは鰹に見えないのだ。
もう6年程前になるが、私よりン十年も歳喰っている両親を初めて中むらに連れて来たとき、「初鰹だとか騒いで、なんでこんな所までわざわざ食べに来るの?と思ったけど、こんなに美味しいのね。知らなかった・・・」と云ったのを思い出した。その年の秋、私は再び両親を連れてきたが、初鰹とは一味違う戻り鰹を堪能していた。そして、そのことは今でも話題に上る。
鯛も負けていない。箸先で山葵を乗せて、特製醤油にちょっと付けて口に運ぶ。ぷりっとした歯ごたえ。鯛ならではの、凄然とした味わいに思わず唸る。刺身とはこうでなくては嫌だ。たまに、水っぽくて脂っぽい刺身の盛り合わせに出くわすこともあるが、そう云う時は「ごめん。今日ちょっと食欲無いんだ。みんな食べていいから(汗)」と、云って取り繕うしかない。
少し休憩します。
つづく
by oishiimogumogu
| 2012-09-30 08:43
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