蕎麦屋に行くならこんな蕎麦屋だ

 もうすぐ毎年恒例の新潟ツアー(10/19~21)がある。通い続けている宿だから、各々自分が飲みたい酒と好きなぐい呑みを持参することを許してもらっている。その持参の酒を今回は事前に買って、宿に送ることにした。車で行くとは言え、重い酒を集合場所までは手で運ばねばならないし、出来る限り冷えた状態が持続するように梱包したりとそれなりに神経を使う。車に乗ってからだって、酒は揺られて疲労するのだ。だったらそれをプロに頼んでしまえということになった。同じ店で仕入れれば、送料も人数割で大したことないし。
 この頃気に入っているはせがわ酒店 麻布十番店。昨年ここで、馴染みの鮨屋で出された“出雲月山 中取り直汲み 純米吟醸 無濾過生原酒”を発見し感動してから、時々訪れるようになったのだ。早速、日本酒とワイン、それにシャンパンを買い込み発送の手配をした。
 さて、その後は蕎麦である。我々3人は、タクシーを捕まえて西麻布に向かう。

 手打ち茶寮 祈念には、盛夏に鯵の冷汁蕎麦を食べに来た。8月だったから暑さというか不快な熱気の中、身体をよじるようにしてやっとたどり着いた記憶が甦る。あれから月日が経って10月になったというのに、私にはまだまだ蒸し暑いし、T氏も額の汗を拭っている。この日は、夢八氏が予約を取ってくれていた。

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 この日、私はまだSONY Cyber-Sshot RX-100(つまり新しいコンデジ)をまだ手にしていなかった。ネット通販で買った私のカメラは、この時搬送途中だ。だからこの日の写真は、今までのCOOLPIXで撮ったもの。
 余談だが、新しいカメラで撮った昨日の鶏の唐揚げの写真は、ちょっとピンぼけ気味だし、露出もうまくいっているとは思えないけど、なかなかド級な迫力に仕上がっている・・・ように思う。

 店に入るなり、店主が満面の笑みで迎えてくれた。蕎麦屋さんって基本的に職人さんだから、どちらかというと愛相がいいとは言えない人が多い。そんな中この笑顔は珍しいが、大いに心和ませてくれる。毎度のことながら、この日も夢八さんプロデュースのおまかせコースだから、それぞれ自分が呑みたい酒だけを選べばいい。
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 呑みたい酒だけ選んで、あとは全部酒屋に任せてきくせに、なんとなく一仕事したという想いがある我々の最初の一杯は、生ビール。お約束の乾杯。されど人生で何度繰り返しても、労働?の後のビールは、飽きることはない。
 
 その後、料理の出具合によって、日本酒をぽちりぽちりとやる。他の二人はスイスイいく。
 酔って何を頼んだのか良く覚えていないが、“ここんち”も器には気遣いがあって、片口に注ぎ直して酒を出してくれる。そう云うのが好きだ。
 ちょっと油断していると、他の二人に「えっ?“ここんち”って、なんか友達の家みたいに言うね」と、突っ込まれた。言われて初めて意識的になったが、そもそも親父の下町の生まれで、家系が代々江戸っ子だから、その言葉遣いの名残をDNAに持っているのかもしれない。
 生まれは西荻窪、その後は多摩の地で育ったから、さすがに“ひ”と“し”が入れ換わることはないが、親父や親父の親戚達がしゃべっていた言い回しが、ぽつりと口をついてでてくることもある。
 日常使う言葉の中に、そんな言い回しの習慣は消えかけてはいるが、身底に微かに残る江戸っ子の心意気みたいなものを私は密かに大事にしている。

 余談が長くなったが、肝心の料理は素朴でさりげないものばかりだ。

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1.突き出しいろいろ。鯨のタレ(漬け干したもの。近いイメージは鯨のジャーキー)。勝浦旅行の帰り、千倉で鯨料理を食べた時のことを思い出して一同盛り上がる。他クリームチーズなどなど。
2.左が鯵のなめろう。“ここんち”の店主が千葉の出身なので、つまみを頼むとよくこのなめろうが出てくる。魚が新鮮なのと味付けが上品で美味しい。右はよく覚えてないが、トマトのマリネサラダだったか・・・
3.鴨抜き。これもまた旨い。鴨にくず粉をまぶして、うま味が逃げないようにするひと手間を惜しんでない。出汁もいいし、鴨も柔らかくてジューシーだ。次回は蕎麦を入れてもらおうかなと思う。
4.これは珍しい、おぼろ豆腐。珍しいのは提供の仕方だ。作りたてで、固まる前の温かい豆乳なのだ。10分くらいで固まって来ると説明がある。そろそろいいかなと、途中で何度も匙で確認するのが、また楽しい。出来たては、人肌の香りのいい上品な豆腐。
5.蕎麦屋の卵焼き。表面は薄いクレープのよう。中はふわふわで熱々。味つけは蕎麦つゆ少々と言ったところか。大根との愛称抜群。
6.鴨焼き。これは何も言うことがない。鴨が葱を背負ってやって来たのだ。シンプルなだけに、素材の善し悪しも問われるが、これは上等な鴨肉だとすぐわかる。脂身の甘さが格別。程良く焼かれた葱との香りが最高。
7.左は枝豆ととうもろこしのかき揚げ。右は鮪漬けのシソ巻き天ぷら。どちらも大きな銅鍋で揚げてくれる。かき揚げはサクサクで香ばしい。漬けのシソ巻きは、酒の当てにもってこいの味。蕎麦屋のというより、天ぷら屋の天ぷらに近いかも。
8.お待ちかねの鯵の冷がけ蕎麦。何度でも言うが、この味はクセになる。夏季限定だったようだが、今年から定番になったらしい。美味しい出汁と、鯵のうま味、胡瓜の歯ごたえと爽やかさ、胡麻の香り、全てを纏った蕎麦をすするとき、ああ祈念に来てよかったなあと思うのだ。
9.更科と発芽蕎麦。どちらもレベルが高い。特に発芽蕎麦は、温加水でないとなかなか繋がらないらしいが、店主は研究の末、水で捏ねている。だから香りが経つ蕎麦が打てるらしい。この蕎麦の歯ごたえと舌触りは格別で、発芽蕎麦ならではのものだろう。そして対照的な更科。私は決して更科が嫌いなわけではないが、感覚的に全部剥かれてかわいそうな気がしてくる。だが、そんな心配もよそに、しっかりとした芯の強い味わいがあった。そこが更科の良いところなのだろう。こっちも美味しい。
10.天井の高い店内。赤が基調だが決してうるさい感じになっていない。分かりづらいが、すだれの外は、外苑通り。

 なんだかんだで、三人とも満腹。今日も旨いものにありつけた。店主が、店の外まで見送ってくれ、夢八氏はタクシーを捕まえ、T氏と私は乃木坂まで腹ごなしに歩いた。

 
 8月の呼吸の仕方も分からなくなるような暑さの中、思い立ってこの店に来た事を店主はよく覚えてくれていた。余程、悲壮な面持ちで現れたのだろう、「あのときは、暑い中大変なのに来て下さって・・・」と、申し訳なさそうに言ってくれた。その時の事は、投稿済みだ。訊くところによると、私が来た後に何人かが“冷がけ蕎麦”目当で来店したらしい。そんな訳で「宣伝料代わりにと」と、祈念の『だし(盛汁)』をいただいた。ブログ効果かどうかは全く分からないから、「いいのかな・・・?」とも思ったが、折角なので素直にいただいた。
 これが、また仰天するほど旨かった。卵焼きや納豆、とろろ、おひたしなどに使ったが、市販のどのつゆにも及ばない。特に届いたばかりの卵で卵がけごはんにしたとき、卵を溶くのにこれを少し垂らしたら、激うまだった。長岡からの新米を温泉水を使って土鍋で炊き、地鶏の溶き卵は祈念の盛汁で味付け。これは、もう最強だ。祈念の店主を含め、私にここまでいい思いをさせてくれる人たちに、どう感謝していいものやら・・・
 殆ど素のままでつかってしまったから、だしポン酢を作るところまで行かなかったが、それで豚の冷しゃぶを食べたら、旨いだろうなぁと思う。まだ少しだけ残っているので、鯖を焼いた時の大根おろしに使おうと考えている。
 それにしてもこの盛汁がこの味になるまでに、どれだけの時間と根気が使われたのだろうか。私は改めて蕎麦屋の底力に触れたような気がした。それと同時に、こんなちまちましたブログ書き込み作業も続ければ、たまにはいいこともあるのだと知った。
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by oishiimogumogu | 2012-10-10 11:34 | 旨い店


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