<   2010年 09月 ( 36 )   > この月の画像一覧

目黒のイタリアン


 この数カ月の間、「とにかく、旨いものが食いたい!」と、日々常々そのことばかり考えている御仁達に、いろいろ連れ回され遊んでもらっている。くっついてゆくと、そこには必ず旨い料理があり、旨い酒がある。よく、こんな店知ってるなぁ・・・御仁達は、そういう思わず舌を巻くような店の常連なのだ。
 さて、昨日もそんなワクワクするような店に行った。JR目黒駅に集合すると東口を出て、マンションばかりが林立する住宅街に突入する。幹事殿は線路沿いの街灯もまばらな道をどんどん歩いて行く。我々もすかさず後に続く。大きなマンションの角を曲がって、袋小路のようなところをちょっと入ったところに、その店はあった。暗闇にぼんやり店の看板のイルミネーションが光っていた。それが『トラットリア・デッラ・ランテルナ・マジカ』だった。
 この隠れ家のような店を紹介してくれたのは、M氏。それに食通のK氏と私がいつものメンバーなのだが、昨日は大物の飛び入りが2名あった。集まった人たちは、年齢も職業もバラバラ。ただ一つの共通点が「とにかく、旨いものが食いたい!」という欲望だ。
 まずはイタリアビールで乾杯。マネージャーが、本日のお薦めメニューの説明に来た。黒板にチョークで書かれたメニューはイタリア語。ひとつひとつの料理を解説してもらう。さて、なにをオーダーしようか。鋭い(こういうときだけ)5人の眼差しが、マネージャーに突き刺さる。
f0238572_15463313.jpg

 説明を聞けば聞くほど、全部美味しそうなので、全員が真剣に思い悩む。挙句にアンティパストにパルマハムと牛タンのゴルゴンゾーラソース、ムール貝と浅蜊のスープ。パスタはゴルゴンゾーラのニョッキ、ラビオリ、手打ちタリアテッレ。メインは子牛のグリル、尾長鯛のアクアパッツァを頼む。ワインも白、白、赤と3本。ドルチェは、ティラミス、リコッタチーズケーキ、ナッツケーキをシェアして、コーヒーを頼んだ。これで、胃袋はFull。もう何もはいらない。

 食べている間は、絶え間なく旨い食べ物、旨い酒、旨い店の話で際限なく盛り上がる。他に話はないのかとも思うが、他に何か言ったところで、きっと誰も聞かないに違いない。飛び入りの方々も、いつも徒党を組んでいる御仁達もその情報の源泉は凄まじい。私は、身を乗り出して旨い情報を頭に叩き込む。しかし、それが本当に楽しいのだ。
 
 (実は今回も店の照明の関係で、写真が上手く撮れなかった。数々の料理写真をUP出来なくて残念だ。ダレカタノム)

 我々が、入った時は他にひと組しかいなかったが、すぐ満席なった。途中でいきなり、照明が落ちて何事かと思ったら、お客の一人が誕生日だったらしく、店のスタッフがイタリア語の「ハピーバースデー」を歌って祝っていた。
 食べたものは全部美味しかった。我々は、重い胃袋を引きずって、一皿一皿の余韻に浸りながら店を後にした。食べた料理も呑んだワインも、夢のようだ。あんなに飲んで食べたのに、諭吉一枚でお釣りがきた。大満足である。是非また行きたい店である。
 


by oishiimogumogu | 2010-09-24 15:49 | 旨い店

今日の朝ごはん


 ちょっと、写真の撮り方を替えて、ひろ窯さん風にやってみた。つまり食卓全体を移したのだ。ただ、それをするために、置いてある雑誌やら、ビールの缶やら、雑然としてテーブルに散らかっているモノ達を片付けなかればならなかったが、こんな風になった。
「食べ過ぎなんじゃない?」云う声が聞こえてきそうだが、この位食べないと、結局、間食してしまうので、いいことにした。私の場合、1日2食なのだ。
f0238572_12501176.jpg
やってみると、器の位置だとか向きだとか結構難しい。大根おろしの器なんか鳩の形をしているのに頭があっちの方を向いていて、そういうことが全然分からない写真になった。器と料理をバランスよく撮るのは、やはり簡単にはゆかないものだ。何事も試行錯誤。もう少しまともな写真が撮れるのはいつのことか・・・



雨の日はこんな曲
by oishiimogumogu | 2010-09-23 13:23 | 日々の食卓

からすみのパスタ


 「からすみ」は漢字で書くと「鱲」と書くらしい。日本三大珍味の一つとして、つとに有名だ。
 しかし、起源はギリシャ、エジプト文明にまで遡る。地中海で捕れた魚の卵や卵巣を塩漬けにしたものが既に食べられていたらしい。それが、ヨーロッパを経由して中国に伝わり、日本や台湾などにも渡来した。
 イタリアでも古くからからすみは食べられていて、主にはパスタにあえたり、サラダに振りかけたりするようだ。魚の濃厚な風味を素材の持ち味と理解する国の人々は、料理の仕方は違っても、我々と共通するところは大なのだ。
f0238572_11383926.jpg
イタリアの食材を扱うコーナーに行くとイタリア産のからすみも手に入る。鰡の他に鮪や鱈の卵巣でも作っており、イタリア語ではBottarga(ボッタルガ)と云う。今回私が手に入れたのは、鮪のボッタルガ。既にミキサーで粉砕してあるタイプのもの。鰡と鮪では、鮪の方が味が強いが、パスタに使うのだったらどちらでも良く、そのとき手に入るもので構わない。固形のボッタルガの場合は、卸し金で卸して使う。

1人分で大匙1と1/2ぐらいのボッタルガ。大匙1の小葱の小口切り。微塵切りの大蒜ひとかけ分。鷹の爪1本(種は抜く)。リーブオイル適量で材料はOK 。
沸騰した湯に塩を入れ(湯の量の1%)パスタを茹でる。
その間に、フライパンにオリーブオイル、大蒜、鷹の爪を入れて火にかけ、オイルに大蒜の風味と鷹の爪の辛みを移す。大蒜を焦がさないように火加減に注意。ボッタルガの半分を投入し、全体になじませて、パスタの茹で汁をお猪口一杯ほど入れる。のの字に混ぜていると乳化する。パスタが茹であがったら、フライパンのソースに投入し、火を強めてパスタとソースをあえる。味を見て塩で調整。皿に盛り付けて、残りのボッタルガと小葱を散らして出来上り。お好みで酢橘を絞るのもあり。
夏バテしてる人にはちょうど良い。脳髄にきざまれる味で、また食べたくなる。
ボッタルガのパスタは、他にクリームソースで作るものもあるのでいずれまた。


by oishiimogumogu | 2010-09-23 12:21 | 日々の食卓

おいしい生活④

 中学学生くらいまで、スープなんてよく知らなかった。コンソメ(顆粒スープの素をお湯で溶いたもの)と、クノールのコーンポタージュくらいが時々通り過ぎて行く程度で、スープなんて別に大して心に掛らなかった。
 年月が経って、今はあちこちでスープバーの類を見かける。具だくさんスープって、それだけでも色んな栄養が取れるので、おひとり様や忙しい人たちには受けるようだ。私はまだスープバーなる処へは入ったことがないが、「美味しい」と周囲の評判はいい。スープは人々に浸透し、市民権を得たのだ。
 高校生以降、いろいろなスープに出会った。牛の骨を煮込んでとった本物のコンソメ、オマール海老のスープ、カリフラワーのポタージュ、ミネストローネetc・・・どれも、それなりのレストランで味わったのだけれど、どういう訳か、メイン料理より印象深かったりするのだ。上手く言えないが、それがスープの魅力であり、滋味深いところなのではあるまいか。
「もう一度、今度は独りであの旅をやり直したい・・・」とう詩は、ハイネだったろうか。いろんな料理に出会うたび、美味しさに感動する事も多々あるけれど、後でひっそり、独りでもう一度味わいたいのは、心の中の記憶に留まるスープと云う料理のような気がする。
 私の心を柔らかく掴んで離さないのも3年前、五反田のヌキテパでいただいた「土の入ったビシソワーズ」であった。残念ながら、それ以来なかなか行く機会に恵まれない。でももしもそういうチャンスが巡ってきたら、内緒でシェフに2杯飲みたいと頼んでみようかと考えている。

f0238572_20364947.jpg

 ヌキテパの田島シェフには遠く及ばないが、夏場にじゃが芋を沢山いただいたりすると、私は冷たく冷やしたビシワーズを作る。じゃが芋の風味をバターとクリームが優しく包みこむ、この冷たいスープは、何度味わっても飽きることはない。

まずは材料から。
f0238572_19461187.jpg大きめのメークイーン2個は、皮をむいて2cm角にカットする。(10分くらい水にさらして灰汁を抜き、笊に上げて軽く水気を切っておく。)
生ハムのスープは鍋の中のじゃが芋が隠れるくらいの分量。
ソフリット大匙3。
バター20g。牛乳100cc。
生クリーム少々。
ウスターソース3~4滴(分量厳守。入れすぎると全てが水の泡になる)


f0238572_193953.jpg鍋にソフリットとバター入れて炒める。
いい匂いがしてきたら、じゃが芋を投入。
(昔のレシピだと50gは入れているが、今はそんなにバターを使わない。バターが少しでも気になる人はオリーブオイル少々で代用する。)







f0238572_19102097.jpgじゃが芋に火が入り、表面が透明がかってきたら、スープを一気に投入。
沸騰させて、スープの表面に泡状に浮かび上がる灰汁を取りながら、暫く煮込む。
灰汁はどうしてもバターの旨みとくっついてしまうので、取り過ぎると旨みも半減してしまう。
最初にじゃが芋を水にさらしておけば、この時点での灰汁は少なくて済む。


じゃが芋が完全に柔らかくなったら、









f0238572_19195149.jpg熱いうちにスープごとミキサーに入れて粉砕撹拌する。













f0238572_19231792.jpgミキサーの中身を鍋に移し替えると、クリーム状のマッシュポテトのようになる。










f0238572_19311237.jpgもう一度、弱火にかけ牛乳を入れる。
ひと煮立ちしたら、ウスターソースをほんの少しだけ(入れすぎないように注意い)加える。
火を止めてシノワで裏ごしして、タッパウェアなどの容器に入れる。
荒熱が取れたら、冷蔵庫に入れて冷やす。
食べる直前に生クリームを回しかけて、浅葱か万能ネギの小口切りを散らす。




 ビシソワーズなんて、昔は誰も知らなかったのに、今では結構知られるようになった。ホテルブランドの缶詰やら、パウチパックのレトルトやら、ちょっとした洋食屋さんのメニューにもなっている。でも、自分で作ったビシソワーズは、あくまでピュアだ。それは、他では味わえない優しい味わいなのだ。


by oishiimogumogu | 2010-09-22 20:02 | 日々の食卓

おいしい生活③

 パソコンのガジェットに寒暖計がある。今、29℃ということらしい。扇風機の風に吹かれて、なんとかキーボードを叩いている。でもやっぱり暑い。心の中で、なんだかだといい訳を唱えてクーラーのリモコンに手が伸びる。冷たい人工的な風が吹き付けてくると、やっとイライラが鎮まる。
 クーラーは、人類発明史上、最高のマシーンだと信じて疑わない今日この頃である。暑い季節、なにはなくともクーラーだ。これが無ければ、食べることも呑むことも始まらないのである。 

f0238572_15561441.jpg

 これから、生ハムのスープと、ソフリットを使ったリゾットを作る。リゾットは、作り置きのスープとソフリットと米さえあれば、いとも簡単にできる。それもグレードはかなり高い。

f0238572_5504470.jpg材料:米0.7合。スープ500cc。ソフリット、大匙2。
具はしめじ、ベーコン適宜。
風味付けのカマンベールチーズ、パルミジャーノ適宜。
それに、白ワインをお猪口一杯。
大蒜ひとつまみ。
塩少々。
ドライタイム適宜。





f0238572_1632914.jpgスープは注ぎ口がついたカップに入れておく。
一応、500ccだが、米の硬さによって水を足したり。
スープを残したりはありえる。










f0238572_16102518.jpgフライパンにソフリットと大蒜を入れ、オリーブオイル少々を加え炒める。
大蒜の匂いがしてきたら、ベーコンを投入。
焦がさないように気を付けて炒める。
ベーコンに火が通って、脂が出てきたら、ワインを加えてアルコール分を飛ばす。
さらに米を投入。





f0238572_1616231.jpg米を炒めて、表面が透明になってきたら、スープを米がひたひたになるくらい投入。
すぐに沸騰するので、休まないでかき混ぜる。
すると、スーッと水分が米に吸われる瞬間がある。
そうしたら、またひたひたになるまでスープを加える。
またかき混ぜる。
途中しめじを加えて、この作業を数回に渡って繰り返すと米が柔らかく炊けて来る。
米を噛んでみて、好みの硬さになったらチーズ2種を加えて溶かす。
最後に塩で味を調整する。
ベーコンとパルミジャーノには塩気があるので、入れすぎないように。
皿に盛ったら、ドライタイムを散らして出来上り。

 正直言って、これが不味いわけがない。具は、その時にあるものを使ってアレンジできる。ツナ缶とオリーブ、浅蜊と葱、ウインナーとキャベツなどなど・・・
 きっとやみつきになることだろう。

【次はビシソワーズ(ジャガイモの冷たいスープ)】


by oishiimogumogu | 2010-09-22 16:31 | 日々の食卓

おいしい生活②

 久しぶりの友人からメール。「猛暑にめげず、食欲旺盛で、元気はつらつ」だとのこと。本題は、小さなカフェのギャラリーでグループ展をするから、良かったら来て欲しい。と、いうことだった。打ち込めることがあって、頑張っているらしい。ちょっと元気をもらう。
 湿度が下がり、過ごしやすくなった。考えたら、海も山も食べ盛りの季節なのだ!

 ソフリットを作る。ソフリットとは、玉葱、人参、セロリを微塵切りにして、オリーブオイルでじっくり炒めたもの。野菜の甘みと旨みを手軽に加えられ、イタリアンのベースとして様々な料理に使われる。作り置きできるので、多めに作って瓶詰にする。冷蔵庫に保存して1カ月位はもつ。

f0238572_1456811.jpg まず、材料。玉葱、人参、セロリ。分量対比は2:1:1。フードプロセッサーにかけるので、2㎝角くらいに切っておく。

f0238572_1510839.jpg
    硬いものから、順にフープロにかけていく。人参→セロリ→玉葱の順。

f0238572_15194454.jpg 野菜をフードプロセッサにかけたら、フライパンに移し、ひたひたになるぐらいのオリーブオイルで、炒め煮にする。
 火にかけているうちに、野菜の水分が抜けて、嵩が減ってくる。ゴムべらで真中に線を引き、ゆっくり戻るぐらいまで炒める。およそ8分くらい。







f0238572_15192291.jpg 出来上って、荒熱が取れたら、煮沸消毒済みの瓶に詰める。冷蔵庫で保存して1カ月位もつ。









 
 次は、スープとソフリットを使ったリゾットを作ってみる。

【次はしめじとベーコンのリゾット】

by oishiimogumogu | 2010-09-22 15:25 | 日々の食卓

おいしい生活①

 私は夏がキライだ。東京の尋常ならざる気温と湿度に毎年(ちょっと大袈裟だが)寿命が縮む思いだ。太刀打ちなど出来ようはずもない人工の自然現象。子供のころクーラー無しで過ごしていたことなど、自分の歴史の嘘だと思えるほど、環境も変化した。人も増え、車も増え、アスファルトも増え、ビルも増え、二酸化炭素も増えた。そして湿った熱は忍耐と生存意欲の限界点に達しようとしている。力ずくでこの灼熱地獄を破壊したい衝動に駆られるが、当然成す術もない。
 そんな憎き夏なのに、秋と云うグラデーションに変化していく過程をスローモーションのような流れの中の感じると、少しだけ惜しくなる。また、微かな寂しさが胸をよぎる。
 体力も気力も奪い、ひたすら汗みどろのあの季節の中であっても、キラキラ光るものを掴んだ感覚を忘れたくないのだ・・・

 生ハムの皮とか、鶏の手羽先とか、そんなものでスープを取るとそれをベースにしていろいろ料理が出来る。まあ、顆粒や固形のスープの素が悪いわけではない。特に顆粒はそれなりに使い道はある。しかし、味噌汁の出しをかつお昆布で引くのと出しの素を使うのとでは、やはり数段味が違う。

f0238572_13482885.jpg 用意するものは、ミネラルウォーター3ℓ。今回使うのは、4.5ℓの鍋を使うので、そのくらいにした。















f0238572_13525715.jpg そして、生ハムの皮。200g。生ハムの切り売りをしているところで、分けてもらえる。











f0238572_1421914.jpg ミネラルウォーター(出来れば中硬水か硬水)に、生ハムの皮を放り込む。
最初は強火で沸騰したら、弱火にして











f0238572_1491751.jpg 圧力鍋の蓋を閉めて、重りが振れたら10分待つ。












f0238572_14132150.jpg 圧力が下がったら、蓋を開けてみる。硬かった生ハムの皮がふやけきっている。スープはザルで濾して、タッパーに小分けして冷凍する。使うたびに小鍋で温めればよい。

 



 

 
 生ハムの皮は、多少脂身がついてはいるものの、ほとんどコラーゲンなので、スープも案外あっさりしている。このスープとソフリットを使って、2種類の料理を作る。

【次はソフリットの作り方】

by oishiimogumogu | 2010-09-22 14:25 | 日々の食卓

秋刀魚を食べに行く


 秋刀魚・・・かぁ。猛暑があまり長引いたのですっかり忘れていたが、そういう時期なのだ。ある方から携帯に「極上品の秋刀魚をむさぼり喰って大喜びの上機嫌だ!(←少々脚色あり)」とメールが飛び込んで来たので、ふと考えた。
 いつもなら、8月の終わりには築地市場の『あんこう屋高はし』で、それこそ極上の秋刀魚を焼いてもらって食べているのに、あの暑さですっかり忘れていた。
 嬉しさのお裾分けなのか、自慢なのか、はたまた挑戦なのか・・・あちらの思惑は分からないが、メールが来て以来、秋刀魚の事で少ない容量の頭がいっぱいだ。どうにかなりそうである。
 
 ようやく涼しくなったし、自分もそろそろ旨い秋刀魚を食べる算段をしなければなるまい。そう云う訳で、今日は秋刀魚を励みに朝から全開で仕事。なんとか時間が出来た。急いで確認の電話。今日の秋刀魚の入りを訪ねる。受話器の向こうから「今日は大丈夫だ。まあ、おいで。」とオヤジの声。どうやらこちらも極上秋刀魚にありつけそうだ。

f0238572_22143362.jpg
  中野駅北口のアーケード商店街は、土曜の夕方のせいか人でいっぱい。自分のペースで歩けずもどかしい。それでも何人もの人を追い越してやっと、『らんまん』に辿り着く。

 「おまちしてました~。」と姉さんが笑顔で迎えてくれた。
 カウンターのネタケースのまん前に陣取り、しばし魚の品定め。おなじみ黒鯛、戻り鰹のタタキ。一夜干しの喉黒、タカベ、烏賊、蛸、鯖、夏の河豚・鰧、それに秋刀魚に鰯が並んでいた。多少は魚の善し悪しを分かるつもりだが、どれも素晴らしい。
 今日は秋刀魚と決めてきたのに、こうなると目移りして困る。オヤジはそれを察してか(というか迷うのは、いつものことなので)「秋刀魚を食べな。今日のはいいから。焼きにして、刺身は鰯でいいんじゃない?あとはなんかすこしつまんで、まだ入れば、鰹も鯖もあるから・・・」流石、心得ていらっしゃる。「松の司」を冷やで頼む。

f0238572_22462051.jpg 突き出しは湯葉包み。出しに漬かった湯葉の中に野菜の煮つけが包んである。この逸品で、上品な酒になる。
 





 焼き秋刀魚の前に鰯の刺身と、焼き茄子を頼む。オヤジの言うとおりだ!この真鰯は、脂がのってとろけるようなのに、生臭みは全くない。おろし生姜と小葱を落とさないように乗せて、薄口醤油で味わう。何も言うことはない。
 

 焼き茄子は、水分の少ない種類の茄子のようで、ほくほくと栗に近い食感だ。甘みがあって旨い。







f0238572_22554087.jpg 
 最近野菜不足なので、隠元の生姜醤油あえをいただく。ぷりぷりの茹で隠元にパンチの効いた生姜醤油が良く合っていて、これがあるときは大抵頼む1品。作り方は素朴なので、自分でもよく作る。私は茹でずに蒸すが、蒸しあがったら必ず氷水で〆る。ひと手間だが、〆ないと余熱で火が入りすぎ、色も悪くなる。

 さて、秋刀魚である。まるまる太ってでかい。ワタの苦味はあくまで上品。築地と比べて焦げていないのが有難い。軽くレモンを絞り、大根おろしを乗せながら頬張る。う~ん、秋刀魚だぁ。何日も前から待ち焦がれた秋刀魚でしか味わえない脂身の極意。スーパーで冷凍ニセ秋刀魚を買わなくて良かった。
「この秋刀魚何処で獲れたの?」
「海で。」
「何処の海よ?」
「北海道・・・」それで、合点がいく。ワタが美味しく食べられるのは、岩手より北で獲れたものでなくてはならない。回遊して南下してくるとどうしても臭みが出るのだ。だから、秋刀魚の時期はまだ続くけど、北の秋刀魚が食べられるうちに食べてしまわねばならない。と、私は思う。間に合って良かった。

f0238572_2318106.jpg 秋刀魚を猫も見向きもしない程、きれいに平らげたら、流石にもう満腹。鰹も鯖も次に来たときの為にとっておこう。
 〆のご飯に突入。お供の子のわた。鶉の卵黄を溶いていただく。ねっとりした独特の食感と塩加減が絶妙でご飯と相性抜群。


 
 天然岩海苔。なんの加工もしていないただの岩海苔。おろし山葵をあえて、生醤油をたらり。これをご飯にかける。磯の香りを食べるようなもの。満腹なのに、ご飯が進む。





f0238572_23281099.jpg 魚のあらの味噌汁。いろんなところで、この手の味噌汁は出てくるが、大抵は大鍋に煮込んである。しかし、ここでは、注文を受けてから味噌汁を作る為、全く味が違う。すっと湯引きしたあら(今日は鯛)で、程良く出しを取る。その出し汁に板さんが背中を丸めて味噌濾しで丁寧に味噌を溶いてるので、魚は臭みだけが取れて、身はぷりぷり。浅葱の風味と最高のコラボレーションだ。とにかく、味噌汁は外せないのだ。

 オヤジは、10代で魚屋に丁稚に出たそうで、この道60年以上だ。釣りキチでもある。店は昔の船大工が作った凝った建物。辛うじて戦災を免れて今に至る。
 とにかく、いつ行っても旬の旨い魚が入っている。天然ものがほとんどだが、その割にお手頃価格なのが嬉しい。魚料理と云っても流行りの創作料理は一切なく、煮る、焼く、造るのみだ(冬は、鍋料理とおでんが加わる)。しかし私は、逆にこの店は、変な創作料理に走ってほしくはない。いまのままがいいのだ。
 あまり教えたくない店の一つである(知っている人は、多いと思うが・・・)。



by oishiimogumogu | 2010-09-19 00:15 | 旨い店

お月見だってさ


 コンビニに用事を足しに行ったら、レジの横に、うさぎのお月見饅頭を発見。裏のラベルを見ると、「こしあん」と書いてあったので買ってきた。私は粒あんが苦手なのだ。
f0238572_19335588.jpg
 そうか、お月見か・・・インターネットで暦を見ると、今年の月見は9月22日だとのこと。まだ一週間も先の事だった。窓の外を見上げると、満月未満の太った三日月が、風に乗って動いてゆくどす黒いまばらな雲の間から見え隠れしていた。。
 
 うさぎ饅頭をビニール製の笹の葉ごと菓子皿に乗せた。こうすると、ちゃんとした和菓子屋のもののようだが、実は食品添加物が結構使われているのだ。いつもなら手を伸ばすことはないのだが、不思議に抵抗感はない。このかわいい、こしあんのうさぎ饅頭が毒と云うならそれもいいだろう。
 涼しくなったとはいえまだ、熱い緑茶という気分にもなれず、冷蔵庫から麦茶を出して蕎麦猪口に注いぐ。これを和菓子の共にした。小さいのであっという間に食べてしまった。もっちりきちょきちょな嚙みごたえ、甘すぎることなく美味しかった。コンビニも侮れないのだ。
 
 今日は一日良く働いた。働くのは嫌いだけど、溜まった仕事をいつまでも放りっぱなしにも出来ない。悲しい定めだが、すっかり秋めいて過ごしやすくなったのだ。ここは少しピッチをあげてがんばらねば!



すっかり秋めいた夜に
by oishiimogumogu | 2010-09-17 20:26 | 日々の食卓

鮨を食べに行く (後編)


f0238572_8344477.jpg ちょっと忘れていたけど、この日の酒は「ゆすら」。山桜桃と書いて、そう読ませる。また、珍しい酒を入れたものだ。冷酒でいただく。いつもながら冷やし加減がちょうどよく、するするいってしまう。

次は鮨編

 昼を抜かないで失敗した。鮨はこれだけしか食べられなかった。実際は写真に撮れなかった、烏賊とキビ酢の新子の握りを食べているから9貫は食べた計算だ。帰り際には胃袋が重くて立つのがやっとだった。




f0238572_844127.jpg
 大きくなったが、辛うじて新子。白酢とキビ酢で一貫ずつ。キビ酢はコクがありまろやか。
 ネタケースの中に昆布に巻いた何かがある。「金ちゃん、これなに?」と聞く。内緒にしていたかったのか金ちゃんはちょっとのけぞった。
「あ、アラです。」
「お、いまごろあるんだ。握って。」
「ハイ。」本当は内緒にしておきたかったネタも調子よく握らせてしまう。でもその旨い事と云ったら・・・
 雲丹は今年最後の利尻の馬糞と蝦夷紫。いずみでは軍艦ではなく握りだ。とろけるとろける。ミョウバンに浸かってない雲丹は絶品。何度食べても唸る。

f0238572_971549.jpg
 この日のお椀は、かぼちゃの和風コンソメにもずくと赤飯が少し入っていた。これも、優しい甘さにもずくの香り、赤飯の粒々が新鮮だ。
 金目漬けと鮪の漬け。金目は伊豆で漁師をしている親方の伯父さんが獲ったもの。定番だが上品な脂の乗りが爽やかな酢橘の香りと良く合っている。鮪の漬けは力強くて濃厚。旨い。
 そして、最後。崩れちゃうから小皿に乗って出て来たのは、早松茸に大トロの炙り。これは、あるときの方が珍しいのだが、どれだけ旨いか教えたくないくらいだ。もちろん松茸は国産である。

 この日は本当に珍しく、他にもうひと組しかお客はなく、いつになく親方と話が弾んだ。京都の某料亭のご飯は何故べちゃべちゃなのかとか、築地の市場横町の有名何処はあんないい魚を何故焦がすのかなど、食べ物屋談義に花が咲く。仕舞には「みんな、なっちゃねぇんだ!」となる。美味しいことは言うまでもなく楽しい夜であった。
 こうして、今月のお楽しみも夢のように終わった。
 
 しかし、夢のお楽しみの陰で、親方や産地の人の苦労は多い。特にこの夏はみんなが楽しみにしている雲丹がピンチだった。「雲丹はいいこんぶを食べさせれば旨いのよ。だけどその作業が半端じゃない。それでも海流のせいで、半分は死んで出荷できない。儲けなんか全然ないのに、彼は頑張ってくれている。」利尻の漁師町村さんのことだ。こんな話を聞きながら、出来るだけ末長く旨い鮨を食べ続けたいと日本酒に浸った脳みそが考える。
 来月はどんなネタが出るのだろうか・・・酔って眠い目をこすりながら私はタクシーに乗った。
 

by oishiimogumogu | 2010-09-17 09:44 | 旨い店


酒・食・器そして旅のたわごと・・・


by oishiimogumogu

プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る

最新の記事

なんだか良く分からなくなるほ..
at 2012-11-28 13:36
なんだか良く分からなくなるほ..
at 2012-11-25 11:09
なんだか良く分からなくなるほ..
at 2012-11-20 20:20
なんだか良く分からなくなるほ..
at 2012-11-14 09:50
なんだか良く分からなくなるほ..
at 2012-11-10 12:45

ライフログ


男の手作り燻製 ― 自慢の肴で今宵も一杯

以前の記事

2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月

お気に入りブログ

ご利用はご計画的に。
ご利用はご計画的に。
+nao日記+
虎魚の愚息の独り言
ペルめし。ラテめし。
ハギーの日和見日記
ひろ窯ブログ

Link

カテゴリ

全体
日々の食卓
つくろうシリーズ
旨い店

器・食器・調理器具
酒・酒器
music
Photograph
その他

最新のトラックバック

検索

ブログパーツ

その他のジャンル

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

料理・レシピ
食べ歩き

画像一覧