Stardust Memory


 仕事も終わったし、打合せもはけて担当者も帰った。一応本日の予定は消化した。
 
 思い返せば本日の空模様は、めまぐるしかった。朝から曇っているなと思ったら、急に雷が一つ鳴って夕立のような雨が降り、それも昼前には上がって陽が降りそそいでいた。そうして今時分なったら薄曇って星も見えない。それが今年の5月12日だ。
 日付が変わるまで、いま少し時間がある。私は準備してあった天狗舞の吟こうぶりを開けた。今宵は杯を交わしたい相手がいるのだ。それは、8年前に逝ったねこのぴくぴくである。今日が命日なのだ。
 あの最後の日を顧みるのは今でも辛い。だが、ヤツと暮らした12年は色褪ることはない。時が経つにつれ、使い古しの毛布のような肌触りで優しく纏わりついてくる。
 さて、ヤツの好きだった鵡川の干ししゃもとまたたびは供えた。想い出に微笑みを添えて、曇り空の向こうの『ぴくぴく星』に乾杯しよう。うまい酒をありがとう。。。。おまえのおかげだ。

# by oishiimogumogu | 2010-05-12 20:33 | 酒・酒器

朝飯、酒を欲す


 鰹の酒盗で作るチャーハンに、玉子を入れるかどうか一瞬迷って止めた。冷蔵庫に唸っている辛子明太子もやりすぎの感がある。主役は酒盗だ。シンプルに行こう。

朝飯、酒を欲す_f0238572_8583644.jpg愛用のスッカラ。真鍮で出来ている。信州の松本で買った。
古いものをリメイクしてあるが、詳細不明だという。
柄が少し細いのが気になるが、チャーハンや石焼ビピンパを食べるのにちょうどよい。

 鰹の酒盗に紹興酒を2~3滴、ちょっと臭みを取ってやる。中華鍋に菜種油を熱し、生姜の微塵切りを少々加え、よく絞って細かく切ったザー菜を加え炒める。そこに酒盗と昨日余分に炊いておいたご飯(冷や飯は必ずレンジで温めておく)を加え、炒まったら鍋肌から醤油を香りづけに回して火を止める。手早く小口に切った万能ネギを入れ、2~3回中華鍋を煽って出来上がり。皿に盛ったら、パックの花かつおを泳がせる。
 作って食べているうちに、しまったと思う。酒が欲しくなってしまったのだ。今日は、長くはかからないけれど、急ぎの仕事があるし、夕方、仕事の打ち合わせで来客もあるから、呑んでしまうわけにもゆかない。嗚呼。


# by oishiimogumogu | 2010-05-12 09:13 | 日々の食卓

I love こめ


 チャイムが鳴ったので、急いで階段を下りた。玄関先で宅配便のドライバーから荷物を受け取る。長岡(新潟県)のTさんから米が届いたのだ。鮨屋の寿司飯は別として、外では滅多に米飯を食べなくなってしまった。洋食屋で「パンとライスをお選びいただけます。」と言われれば、「それじゃ、パンで・・・」と答えてしまう。
I love こめ_f0238572_14432897.jpg Tさんの米は旨いから、そうそうこれを越す飯を外で食べるのは難しい。がっかりするくらいなら、食べないほうがよいという訳だ。
 では、なぜ旨いかと云うと、農家のTさんが長岡の地で丹精込めた低農薬米の内、農協などに出荷しないもの、つまり自家用にしている米を分けてもらっているからだ。自家用の米と云うのは、例えば漁師が船上で食べる魚みたいなもので、その場にいるものだけが味わえる役得だ。米の場合は、売るための田んぼとは別に、ほぼ無農薬有機栽培した米で、実は採算を考えていない。それは生産者だけが味わえる、云わばシークレットブランドのコシヒカリなのだ。

 Tさん宅はその米を温湿度管理できる倉庫に1年分蓄えておく。それを私が横から少々いただいている。他にもこういう人が実は何人かいて、それぞれスーパーなどで買った米より格段に旨い米を食べている。しかも、送料も取らずに送ってくれるので、はちゃめちゃに安い。本当に足を向けては寝られない程、感謝している。
I love こめ_f0238572_15123077.jpg
 
 さて、その米だが、毎回私は3kgづつ送ってもらう。一人で食べているので、5kgも10kgもとなると、味が変化してしまうし、置く場所もないからだ。Tさんには迷惑な話だが、勘弁してもらっている。頼めば精米もしてくれるが、玄米のまま送ってもらい、届いたら真空容器に入れて保管し、炊く直前に家庭用精米機で精米する。その日の気分によって、白米にしたり七分搗きにしたりする。精米機も安くなったので、一昨年ようやく手に入れた。I love こめ_f0238572_15152666.jpg
 精米したての米は黙っていても旨い。その米を炊くのは拙宅の場合、土鍋だ。10年前に安物の炊飯電子ジャーが壊れて以来、ずっと土鍋。今のもので、三代目になる。この三代目は京都の雲井窯の炊飯土鍋だが、炊きあがった瞬間に土鍋の蓋と檜の蓋を交換する。すると、蒸らしが終わったころには、ほのかな檜の香りが移って、そん所そこらでは味わえないご飯になるのだ(しかも、冷や飯をレンジで温めた時も檜の香りが残っている)。拙宅の土鍋は2号炊きなので、来客があるときなど実はフライパンでで炊いたりもする。しかしそれでも結構おいしい。ちゃんと蟹穴もできているし、米も立っている。つやつやで香りもよい。
I love こめ_f0238572_14583852.jpg

 この10年で、私の飯炊きの腕は相当なものになった。今じゃ水加減も目分量で無問題。お焦げのコントロールも自在、行ったところにある環境で旨い飯を炊いてみせている。飯盒もOKだ。
 長岡のTさんのおかあちゃんは云う、「みなさんおいしいおいしいって言って下さるが、私らずっとこの米だから、それが普通でよその米は分からんけど、東京の米はそんなにおいしくないんだがね?」農家は、苦労していい米を出荷しているはずなのに、我々の口に入る素気ない米は、どこか間違った政策の賜物なのかもしれない。I love こめ_f0238572_1505296.jpg



本日の朝ごはんはこちら
# by oishiimogumogu | 2010-05-11 15:01 | 日々の食卓

タイムカプセルウイスキー

タイトルはSFちっくだが、内容は唐代中国と古いウイスキーと戦国大名のこと


葡萄美酒夜光杯  欲飲琵琶馬上催
酔臥沙上君莫笑  古来征戦幾人回


こんな詩を肴に飲んでいる。この詩は唐時代の詩人、王翰が書いたもので高校の教科書にあった。『夜光杯』である。

葡萄の美酒に夜光の杯 飲もうと欲すれば馬の上で琵琶が奏でられた
酔って砂の上に倒れこんでも笑わないでほしい 古来より戦場から幾人戻ったと云うのだ


このたった28字が、脳にダイレクトに映像を映し出して見せる。あまりに美しく、切なく、ロマンティックだ。教科書は嫌いだったが、たまには良いことも書いてあるものだ。とにかく、この詩を知った瞬間から動脈を締め付けられるような錯覚を起こし、その記憶が血液に絡みついたまま今日まで生きている。
独りで呑む夜には、最良の酒肴になってくれるのだ。

夜光杯の形状は、馬上杯である。元は中国で発祥したものだろうが、その馬上杯は上杉謙信によって、私の中ではある意味神格化されている。
見たことはないが(当たり前だが)、酒の飲み方は半端なくカッコよかったはずである。謙信の馬上杯は米沢の上杉神社に展示されている。外側は草花模様、内側は金箔を施した惚れ惚れする馬上杯だ。(いつか、螺鈿で造ってもらおうと考えている)
・・・こんなので、酒呑んで砂漠の月を眺めて酔って寝てしまえるなら、朝を迎えられなくても本望だろう。そんなことを想いながら、とっておきのバカラで10年前に買ったサントリー山崎12年(つまり山崎22年)をロックでちびちびやっている。夜風も冷たくないいい夜だ。(10年取っておくと、さすがに1ランク上の酒になる。そのことを知ってから、毎年10年後の為に一本買うことにしている)


四十九年 一睡夢   一期栄華 一盃酒

49年の生涯は一睡の夢に過ぎず、ひと時の繁栄も一杯の酒に等しい

辞世の句とされている謙信の詩。どこまでもカッコよく行くのだね。戦国の酒豪謙信公に乾杯。



# by oishiimogumogu | 2010-05-10 21:40 | 酒・酒器

ある種の食物アレルギー


 ぎょうざ、ギョウザ、餃子・・・頭の中で執拗に繰り返される。誰かと話していても、仕事をしていても気をつけないと自分が支配される。餃子に。
 もしかしたら、この現象を理解できる人もいるかも知れないが、私の場合には他に「カレー」、「蕎麦」、「エビフライ」、「鰻」、「パスタ」、「オムライス」において周期的に見舞われる“発作”である。一昨日の土曜は、餃子発作で身動きとれなくなってしまった。餃子は自分でも得意料理だが、こうなると自作するなどと悠長なことは言ってられない。そこで、阿佐ヶ谷の餃子房豚八戒へ行った。土曜なのに事前準備不備により、40分程並んだが、どうにか餃子を充填して事無きを得た。発作を侮って、処方を怠ってしまうと2~3日引きこもって、なにもかも放置状態になってしまう。電話もメールも放置されるので、外部との接触が途絶えて人様に迷惑がかかるのだ。私の持病である。駆け込む病院は次の通りだ。
カレーの場合→東銀座ナイルレストランスマトラカレー共栄堂神保町エチオピア
蕎麦の場合→猿楽町松翁、江古田じゆうさん
エビフライの場合→太田市場大松
鰻の場合→浅草色川
パスタの場合→永福町ラ・ピッコラ・ターヴォラ
オムライスの場合→麻布十番グリル満天星
考えてみれば、上記の店に行きたくなる病気かも知れない。ここに鮨が入ってないのは、鮨で発作を起こすと究極の事態を引き起こすので、定期的に予防接種を受けることにしているからである。

ある種の食物アレルギー_f0238572_13124449.jpg名物『羽餃子』最後に水溶き片栗粉でパリパリの羽をつける。見かけ倒しではない食感が本体餃子にマッチしている。羽餃子はスタンダードで癖のない味。皮はもっちり感があって餡とマッチしている。バランスが良い美味しさ。紹興酒も飲める。主人は気さくで感じがいい。2階への手動式カートが見もの。



ある種の食物アレルギー_f0238572_13222667.jpg精進蒸餃子。このほかに海老水餃子、豆腐水餃子、麻棘餃子、つまみ数種類。どれも美味しい。
# by oishiimogumogu | 2010-05-10 13:26 | 旨い店


酒・食・器そして旅のたわごと・・・


by oishiimogumogu

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